オンライン会議も長続きしなかった

新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、2021年与野党合意で「対面での質問取り自粛」のおふれが出たのを契機として、オンライン会議が一時増えはしたものの長続きせず、結局元に戻ったと言われる(「日本経済新聞」2022年8月19日付)。

対面がなくならない理由はさまざまだが、国会議員が面子にこだわるというのは大きい。日本のような暴力が否定された民主主義社会においては、権力の象徴はどれだけ人が集まるかだ。議員会館の事務所前に数多くの役人を立たせて、自分の権力を示したがる議員は今も昔も健在だろう。オンラインは基本的に民主主義下の権力と相性が悪い。

中野雅至『没落官僚 国家公務員志願者がゼロになる日』(中公新書ラクレ)
中野雅至『没落官僚 国家公務員志願者がゼロになる日』(中公新書ラクレ)

役人側にしても事情は大して変わらない。国会議員と直接話したほうが濃い情報が取れるし、質問取りにしても微妙なニュアンスがくみ取れる。上司に報告する時に高く評価されるだろう。仲良くなれば、何かと自分にプラスになるかもしれないというスケベ心もあるだろう。

結局、お金がリアルに絡む商談はオンラインではできない。それと同じ理屈だ。民主主義社会では国会議員は権力の象徴であり、彼らの合意がないと、どんな些細な仕事も進まない。

提言では「厚生労働省における「国会業務」効率化努力は最大限行った上で、国会議員の先生方のご協力もいただけるよう、政治レベルでの申入れを行っていただきたい」としており、丁寧な言葉遣いながら、踏み込んだものとなっている。だが、果たしてどこまで実現できるものだろうか……。

【関連記事】
【第1回】「日々の仕事を真面目にこなす官僚」の屍が積み上がっていく…"財務省の権力"衰退後に跋扈する官僚の正体
だから中国は尖閣諸島に手を出せない…海上保安庁が「領海警備」「海難救助」以外にやっている知られざる仕事
NHK大河ではとても放送できない…宣教師に「獣より劣ったもの」と書かれた豊臣秀吉のおぞましき性欲
中2で「初めてのセックスはどんな状況か」を考えさせる…日本と全然違うカナダの性教育
銀座ママが「LINEを交換しよう」と聞かれたときに必ず使う"スマートな断り文句"