「子持ち様のせいで残業」「子持ち様は急に欠勤・早退」……そんな投稿が吹き荒れ〈#子持ち様〉というハッシュタグがXでトレンドになる日本。ジャーナリストの此花わかさんが、それとは正反対に子供がいない層からの不平不満の声が上がらないハンガリーの少子化対策をリポートする――。
「日本人はいずれ存在しなくなる」を防ぐために
2年前にイーロン・マスクが「日本人はいずれ存在しなくなるだろう」とXに投稿したのを覚えているだろうか。特に日本において、少子化は深刻な緊急課題だ。
実際に、政府は、26年後の2060年には総人口が現在の約1億2400万人から約8700万人に減少し、高齢化率は40%近くになると推計している。約25年後に日本は3割の人口を失う、ということだ。
そうでなくとも、ウクライナ戦争や円安の影響で、エネルギーや食料を輸入に頼る日本の物価は上がる中、今後さらに進むのが確実な少子化による税収の減少や人手不足は、税金や物価の高騰を引き起こすと言われている。それだけではない。さまざまな公共サービスが享受できなくなる恐れもある。
ところが、だ。「人口縮小」は国民に大きな不利益をもたらす、と日本人が危機感を共有しているかと思いきや、#子持ち様 というハッシュタグがXでトレンドになるなど、子育て層への風当たりが厳しいのが現状だ。物価が上がるのに収入は増えず、子どもをもてば文句ばかり言われる。婚姻率や出生率が低下するのはしかたないかもしれない。
一方、他国はどうだろか。例えば、日本と同じく消極的な移民政策をとるハンガリーは、4つの柱からなる独自の「家族政策」を展開し、過去10年間ほどで出生率を1.23から1.54まで上げ、婚姻率を2倍に高めた。
過去記事で、同国の「経済インセンティブ」「住宅購入支援プログラム」「ひとり親支援などのNGOに対する大規模支援」という3つの柱を紹介したが、本稿では、最後の柱である「ワークライフバランス」を紹介する。興味深いことに、この施策は、子どもがいる層と子どもがいない層の分断を極力減らすよう配慮されているという。