初心者が陥りがちな民泊の笑えない失敗とは
民泊を運営するうえで避けられない問題がトラブル対応だ。その点、運営を委託するメリットは大きい。
「民泊に寄せられる苦情では騒音関係が多いです。近隣からクレームが入ったり、警察を呼ばれたりすることもあります。その場合、緊急対応で現場に駆けつけ、近隣への謝罪、ゲストへの注意、事情聴取への対応を行わなければいけません。会社員がトラブル対応をするのは現実的ではないので、『駆けつけ対応』を謳う運営代行業者に一任するしかないでしょう。ほかには鍵のトラブルも多いです。鍵の紛失は清掃や次のチェックインに影響が出ます。ゲストが道に迷ったときはリアルタイムで対応できないと、クレームにつながります」(R社長)
そもそも、特区民泊では苦情の受け付けに24時間対応が義務付けられている。
「弊社には電話対応部署がありますが、会社員が自主管理するとなると、旅行や出張にも行けないので、現実的ではないでしょう」(伊藤氏)
上手くいけば約2年で初期費用の回収も可能となる民泊だが、なかには開業に至らず挫折するケースもあるという。初心者が陥りやすい罠について教えてもらった。
「不動産屋の言う『民泊可能』を鵜呑みにしてはいけません。よくよく話を聞くと単に大家がOKと言っているだけで、行政の許可が下りるとは限らない場合があります。物件契約前に自分で保健所と消防署に事前確認するか、民泊専門の仲介会社を頼るべき。最終判断は自己責任となります」(R社長)
もっとも注意を払っておきたいのが、設置が義務付けられている消防設備だ。「事前の確認を怠ると、リフォーム完了後に消防設備の設置費用が予想より高額だと気づくことがあります。通常なら30万円で済む工事が、建物の構造によっては100万〜200万円かかることも。結局、多額な初期費用を払うもオープンできずに撤退する方もいます」(伊藤氏)
物件の差別化が図りやすい地方では、内装やコンセプトは業者に頼るのではなく自分で決めたほうがいい。
「すべて業者に丸投げしてしまうと、ありふれた『金太郎飴物件』をつくられてしまい、ライバル物件の中に埋もれてしまいます」(羽田氏)
次項からは東京・大阪・地方それぞれのより詳細な民泊市況を3人の識者に解説してもらう。
(後編へ続く)
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月19日号)の一部を再編集したものです。