日本の「シェアエコノミー」が立ち遅れている。この6月に「民泊」にまつわる新法が施行されただが、施行前に約6万件あった物件数は、施行後に7000件程度にまで減った。大和総研の市川拓也主任研究員は「このままでは日本のシェアエコノミーは途上国並みで終わってしまう」と警告する――。
エアビーアンドビーは民泊新法施行前日の6月14日に都内で事業説明会を開いた。写真はエアビーアンドビージャパンの田邉泰之代表 (写真=AFP/アフロ)

シェアエコのランキングでは213カ国中91位

スウェーデンのシンクタンク「Timbro」が今年7月、シェアリングエコノミーについて、213の国や地域のランキングを発表した。これによると、1位はアイスランド、2位はタークス・カイコス諸島、3位はマルタといった島国が占め、EUではデンマークが8位、アイルランドが10位、フランスが19位、スペインが23位などとなっている。

こうした中、日本は91位と先進7カ国(G7参加国)中で最下位である。シンガポール、マレーシア、スリランカはそれぞれ65位、69位、78位と日本より上位にある。フィジーやトンガよりも日本の順位は低く、シェアリングエコノミーの世界では、わが国は発展途上国と言ってよいだろう。

シェアリングエコノミーという言葉は最近、しばしば聞かれるようになってきているが、IoTに注力する日本が同じインターネットを活用するシェアリングエコノミーで、ここまで後れを取っているのはなぜであろうか。

遊んでいる資産やスキルを活用するシェアリングエコノミー

シェアリングエコノミーとは、他人の保有する遊休資産やスキルをインターネット上で提供したい者と利用したい者をマッチングすることにより、有効活用を図るものである。提供者と利用者のマッチングにはプラットフォームが必要であり、これを提供するのがシェア事業者である。総務省「情報通信白書28年版」には、シェアリングエコノミーの各国合計の市場規模は2025年には約3350億ドルに拡大するとの予測がある(※1)

企業が営利目的で所有する自動車を会員に貸し出す「カーシェア」のような形態も、シェアリングエコノミーの範疇から外す必要はないと考えるが、基本的にシェアリングエコノミーは、提供者と利用者およびこれらを仲介するシェア事業者の3者から構成されている。

こうした個人間のシェアリングエコノミーを代表するのが民泊である。有償のライドシェアも世界中で広まりを見せているが、日本では禁止されており、本稿では民泊を中心に課題を掘り下げてみたい。

(※1) 出典元:PwC「The sharing economy - sizing the revenue opportunity」

過剰な民泊規制の背後にあるもの

民泊は空いている部屋を泊まりたい人に貸すサービスであり、借りる側は安さや利便性を享受でき、貸す側は収入が得られる。両者を仲介するシェア事業者は手数料を得る。シェア事業者で有名なところとしては、日本でも米サンフランシスコに本拠を構えるAirbnbがある。