前編より続く)

25年の大阪万博に加えて、30年秋にはカジノを含む統合型リゾート(IR)が開業する大阪。とりわけ特区民泊である大阪市はさらなる盛り上がりが予想される。前出の伊藤大輔氏が狙い目のエリアを解説する。
大阪の通天閣近くの商店街
写真=iStock.com/shih-wei
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特区民泊の大阪市内万博後も活況は続く

私も25年の万博には期待していて、万博特需が発生すると予想します。仮に万博特需がなかったとしても大阪の観光客は増え続けるでしょうし、あくまで万博は一つの起爆剤だと考えています。30年開業予定のIRについても同様です。大阪市がインバウンドを推進し続ける限り、その波には乗り続けたいところです。大阪の民泊市場は訪日客と物件数がシーソーのような関係で増え続けていると感じます。民泊物件が飽和してもそれは一時的な状況で、観光客の増加によって解消されると考えます。そのため、短期的に赤字に陥ったとしても、すぐに撤退の結論を出すのはもったいないです。

最近は初心者の参入に加えて、不動産投資で成功した投資家など実績と資本があるプレイヤーも民泊に興味を持ち始めています。数百万円で始められる民泊は、不動産ビジネスのなかでは小資本かつ回収までの期間が2〜3年と短いので、規模の拡大もしやすいのです。

大阪で狙い目のエリアは、圧倒的に大阪市内。八尾市や寝屋川市も特区民泊に指定されていますが、まだ民泊の波は来ていません。

なかでも狙い目なのは、大阪観光で外せない人気スポット、難波・心斎橋・道頓堀・千日前からなる繁華街「ミナミ」周辺です。なんば駅から近鉄線や御堂筋線で1駅の近鉄日本橋駅や大国町駅で物件が見つかれば家賃を抑えて安定運営が期待できます。

大阪市で狙い目のエリアは?
図版作成=大橋昭一

天王寺駅や動物園前駅も人気の民泊スポットです。「西成で民泊が成り立つのか」と感じる方もいるかもしれませんが、外国人が地図で西成を見たときに感じるのは、「中心地から近くて利便性が高そうで宿泊料がリーズナブル」といったものです。かつて暴動が起きた労働者の街だったと知ってもネガティブな感情は持たないでしょう。

ほかにはUSJ周辺のJR大阪環状線西九条駅も需要が見込めるエリアですが、ここはなかなか物件が出ないエリアです。今後人気が出ると予想するエリアとしては、海遊館のある港区のベイエリアと、万博会場やIRにアクセスしやすい大正区です。特に大正区はまだ空き家が出やすい地域なのでチャンスがありそうです。

大阪で民泊を始めるメリット

大阪における民泊滞在の特徴として、大阪を拠点にして、京都・奈良・神戸などの各方面へ観光に行く利用客が多いという点が挙げられます。便利な大阪を関西の拠点として1週間程度のスケジュールで関西の名所を巡るスタイルは、特区民泊の要件である「2泊3日以上の滞在」とも相性が良いです。

特区民泊は365日営業できるのがメリットですが、事前に近隣住民に対して説明会を開くなど、民泊新法にはないハードルも存在します。そのため開業に必要な諸手続きは、専門の行政書士にお願いするのが基本です。費用の目安としては20万円程度なのでプロの手を借りるべきでしょう。

特区民泊である大阪市は、東京と比べて家賃も安く、民泊を始めやすい都市です。ハードルが低い半面、安易に手を出して物件は抑えたものの、自力での開業を断念した初心者の方が、私のところに相談に来るケースもあります。ハードルの低さは価格競争へ陥りやすい面もあるため、どう勝つかという視点も常に必要です。

手間ひまをかけたちょっとしたサービスや、挨拶やアメニティ、お土産など小回りが利く個人ならではのおもてなしが、大資本の宿泊施設との差別化につながります。