これら両者の関係については、私は「補償制度」という提案をしたい。もし何らかの理由で考えていたような映像が撮れなかったり、話の流れが思い通りにいかなかったりしたときには、かかった費用をちゃんと補償してあげるというふうにすれば、制作会社も無理をして制作を進めようとしないだろう。それこそ、本当の意味での「共存共栄」ではないか。

写真=iStock.com/Yasin Cobanoglu
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コンテンツ不足を招いたクリエイター軽視の結果だ

最後に、「今回の事件の際のテレ東の記者会見から見えてくるものは何なのか」という考察をおこなって、本稿を終えたい。苦し紛れの発言が続いた記者会見。その様子から見えてきたのは、とっくにこの番組が消費期限を過ぎていたということだ。

いま、テレビ業界は未曽有のコンテンツ不足に陥っている。なかなか新企画が生まれず、ヒット番組も出にくくなっている。そのため、多少番組に無理が生じてきても「延命措置」をはかって長続きさせようとする。

それは新しいモノを生み出そうとする現場のクリエイターを大事にしてこなかったテレビ局がいま背負わされている大きな「ツケ」だ。番組の終了は致し方ないとはいえ、番組担当者及び監督責任者の計2人に対して減給等の社内処分をくだしたとテレ東が「処分」に関して発表したことには強い違和感を抱いた。

本来、社内処分はその会社の人事的な内情であって、公の場で明らかにする必要はないはずだ。「トカゲのしっぽ切り」と感じた読者も多かったのではないだろうか。

「警察密着モノ」の始まりは、1978年から1992年にかけて放送されたテレビ朝日の「警視庁潜入24時‼」だと言われている。それから半世紀近くがたった。

逮捕される側の人権を無視し、権力におもねるような番組はいまの時代には相応しくない。コンプライアンスや人権、個人情報保護の観点や考え方がまったく違ってきているからだ。

そして何より、一番「浦島太郎化」しているのはテレビ局自体なのではないだろうか。その錆びついた構造や旧態依然とした考え方を改めないと、また同じような事件が繰り返されることになる。そう、警鐘を鳴らしたい。

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