人間ドックや健康診断には「がんを早期発見するため」として、さまざまなオプションの検査が用意されている。その一つ、「腫瘍マーカー」は血液検査で手軽に調べられるため、選択する人は多い。しかし、「腫瘍マーカー」の大半は、早期のがんには反応しないという重大な落とし穴があるという。ジャーナリストの岩澤倫彦さんが取材した――。(第3回/全4回)

腫瘍マーカーの結果に一喜一憂する人たち

「腫瘍マーカーとは、がんが存在するかどうかの参考に用いる事ができる血液検査の数値です。通常の健診に追加して腫瘍マーカー検査をオプションで実施できます」

これは、ある人間ドックで腫瘍マーカーを紹介する一文である。

一般的な人間ドックには、すでに血液検査が組み込まれているので、オプションで追加するだけで、新たな手間もなく腫瘍マーカーは計測できる。

血液検査のための採血
筆者提供
血液検査のための採血

人間ドックの関係者に聞くと、受診者の約半数が腫瘍マーカーを選択するという。今では、すっかりオプション検査として定着して、X(旧ツイッター)にも「安心を得るために大腸がんの腫瘍マーカー検査を追加した」「腫瘍マーカーの結果が入った封筒を震えながら開けた」「腫瘍マーカーの値が跳ね上がった項目があって即MRIで再検査した結果、問題無しだった」など、多くの体験談が投稿されている。

血液収集チューブ
写真=iStock.com/huasui
血液検査のイメージ

腫瘍マーカーの検査結果に、多くの人が一喜一憂していることが、Xの投稿から伝わってくる。がんの可能性があると検査で指摘されたら、誰でも不安になるのは当たり前だろう。

基準値を超えると、精密検査を勧められるので、CT(X線を使用したコンピューター断層撮影)や、MRI(磁気共鳴画像診断装置)、内視鏡などの検査を受けることになる。だが、実際にがんが見つかるケースは極めて少ない。