東大病院の腫瘍マーカー検査は1万2650円

腫瘍マーカー検査は、国内の人間ドックや健康診断を行う医療機関の大半が取り入れている。大学病院も例外ではない。

東京大学医学部附属病院の人間ドックでは、「オプション検診」として腫瘍マーカーが用意されている。1万2650円で、男性7種類、女性8種類の腫瘍マーカーを調べることが可能だ。

「この検査は採血検査で行われ、主に腫瘍の存在する可能性、種類などを判定する目安のひとつとなります」
(東京大学医学部附属病院・予防医学センターのHPより)

天下の東大病院が、このように紹介しているのだから、“腫瘍マーカーは、がん検診として有用な検査”と信じる人は多いだろう。

合併して東京医科歯科大学から名称が変更された、東京科学大学病院では、あえて「がんスクリーニング用」と明記して、11種類の腫瘍マーカーをオプション検査に入れている。

スクリーニングとは「ふるいわけ」を意味するので、がん検診の検査と同義と解釈できる。

慶應義塾大学の人間ドックでも、「プレミアムな検査プラン例」として、三大疾患(脳血管障害・心臓病・がん)を詳細に検査する中に、腫瘍マーカーも組み込まれていた。

腫瘍マーカーの血液検査
写真=iStock.com/Motortion
腫瘍マーカー検査のイメージ

「がん早期発見に腫瘍マーカーは役に立たない」

腫瘍マーカーは、がん細胞によって作られたタンパク質や酵素などの物質で、40種類を超える。主な腫瘍マーカーが反応する、がんの種類は次の通りだ。(国立がん研究センター・がん情報サービスを基に作成)

「CEA」:甲状腺、肺、食道、胃、大腸、膵臓、胆道、乳、子宮頸部
「CYFRA」:肺
「AFP」:肝臓
「CA19-9」:胃、膵臓、胆道
「CA15-3」:乳
「CA125」:子宮頸部、卵巣
「PSA」:前立腺

人間ドックなどで、腫瘍マーカー検査をオプションで追加すべきか? 国立がん研究センター検診研究部の中山富雄部長に尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「2020年に、国立がん研究センター中央病院の人間ドックで、がんと診断された患者を対象に腫瘍マーカーのCEAを調べたところ、異常値は約1割でした。残り9割は、がんがあってもCEAは正常値内だったのです。

がんに反応する能力の『感度』が1割という、凄くショッキングなデータでした。腫瘍マーカーは、がんの早期発見にほとんど役に立ちません。ですからオプション検査に腫瘍マーカーを追加するのは、やめたほうがいいと私は考えています」