なぜテレビは「つまらない」と言われるようになったのか。元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道さんは「各局は人気芸能人を集めたトーク番組で視聴率を稼ごうとしているが、それではどこも同じになってしまう。テレビ東京のバラエティ番組のもつ『志は高く、カメラは低く』という理念に立ち返るべきだ」という――。

テレビ東京が独自路線を行くワケ

「異色のテレビ局」と言えば、テレビ東京と答える人は多いのではないだろうか。

最近では、他チャンネルがこぞって安倍晋三元首相の国葬を中継にする中、テレ東だけは5分間の特番を編成。通常通りの枠で、アメリカ映画「ベートーベン」を放送した。もはや見慣れた光景かもしれないが、テレ東の対応はネットでも話題になった。

こうした報道姿勢だけではなく、テレ東の異色ぶりはバラエティ番組によく表れている。『家、ついて行ってイイですか?』『YOUは何しに日本へ?』『開運!なんでも鑑定団』『出没!アド街ック天国』。こうした人気長寿番組はどれもテレ東だ。

「テレ東は攻めていて面白い」とか、「オンリーワンだから好き」という声はよく聞かれる。他のキー局に比べて小さいながらも好感度が高いのがテレ東だと思う。テレビ離れが進むと言われる中で、なぜテレビ東京は注目を集め、人々の支持を集めているのか。

テレ東が「オンリーワン」で「攻めている」のは確かで、それには明確な背景と理由がある。今回、テレビ東京でバラエティを制作するテレビマンたちに改めて話を聞いてみた。その結果、他局には真似できない、言ってみれば「テレ東バラエティの必勝法」がみえてきた。

豪華ゲストには頼れない

テレ東バラエティの根本は、「制作費をいかに安くすませるか」というところからスタートする。テレ東には残念ながら、他のキー局ほどお金がない。どこかでお金を切り詰めなければ、番組は制作できない。では、どこを切り詰めるか?

そもそもバラエティ番組は大きく分けると「ロケVTR」と「スタジオ」で構成される場合が多い。そして、現在の主流は、「いかにたくさんの人気者を、スタジオに揃えて面白いトークをさせるか」となっている。

スタジオに集められた人気芸能人が、面白トークを展開して、視聴率を稼ぐ。スタジオトークを面白く展開するための「材料」として必要なのが「ロケVTR」である。言ってみれば「ロケVTR」は「スタジオトークに火をつけて、燃え上がらせるためのガソリン」のようなものだ。

たとえば「アメトーーク」(テレビ朝日)や「しゃべくり007」(日本テレビ)などのように、ひな壇に豪華ゲストを揃えてトークを繰り広げる「トークバラエティ」が多いのは、こうした流れによるものだ。