他局に広がる「テレ東的バラエティ」の手法

テレ東には「他局のほうが上手にできることは他局に任せる」という文化があると思う。ずいぶん前だが「ワイドショーは任せた。バラエティは任せろ」というテレ東の広告があった。「トークバラエティは、得意な日テレさんに任せて、うちはロケを頑張ります」という姿勢なのだろう。

外観テレビ東京
写真=iStock.com/winhorse
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しかし、思えばこれまで紹介してきた「テレ東的なバラエティ」を、今度は各局が真似をするようになってきた。かれこれ10年くらい経つであろうか。各局がテレ東に寄ってきている気がするのだ。

テレ東勤務の私の友人は「本当はテレ東がやるべきだった企画を他局さんがやっていると、悔しくてならない」という。「うちならもっと上手くできたのに」という悔しさと、「うちのバラエティ制作力が次第に低下しているのではないか」という自戒が胸によぎるからだそうだ。

最近では、そんな友人も「あまりの見事さに悔しくもならない。尊敬する」という見事な「テレ東的バラエティ」がいくつも出てくるようになった。たとえば中京テレビの『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』には、他局ながら拍手を送りたいのだという。

この『オモウマい店』は、サービスが過剰でおいしい飲食店の「おもしろ店主」に、若手テレビマンたちが密着・突撃取材し、その人となりを面白おかしく、かつ少しホロリとさせるような人情バラエティ番組の傑作である。その巧みな編集技法も、テレビマンたちの注目を集めている話題の番組だ。

人気番組の根底にあるイズム

この番組にも当てはまるのが、「志は高く、カメラは低く」という姿勢だろう。

これが無ければ取材相手は心を開いてくれないし、通り一遍な素材にしかならない。視聴者の心を動かすこともできないだろう。長時間密着するような身体を張ることだけが重要なのではなく、人気番組の根底にはこうしたイズムがあると言える。

なぜテレビは「つまらない」といわれてしまうのか。テレ東に限らず、テレビマンたちは誰しも「志は高く、カメラは低く」の精神に立ち返ったほうがいいのではないか。そして、各局が各局の色を出し、「得意分野を伸ばす」のが良いと思う。

どのチャンネルを見ても同じではつまらない。「○○は任せた。××は任せろ」という何かを各局が見つけて、色とりどりなテレビを目指していってほしいと思う。そうすればテレビはもっと面白くなる。

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