人気のアナウンサーが次々とテレビ局を辞めている。一体何が起きているのか。元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道さんは「男性は任される仕事が減り、女性は極端なまで若手が重視される。人気の女子アナであっても決して安泰ではない」という――。

※本稿は、鎮目博道『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)の一部を再編集したものです。

テレビカメラの前にぼやけたニュースキャスター
写真=iStock.com/Grafissimo
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男性アナウンサーが次々とテレビ局を去っている

もし「好きな男性アナウンサーは誰ですか」と聞いたら、名前が挙がるのはおそらくTBSの安住紳一郎アナや、元日テレの羽鳥慎一アナ、元・日テレの桝太一アナぐらいではないでしょうか。

安住アナと羽鳥アナはアラフィフですし、桝アナはアラフォーで、いずれもかなりのベテランです。そしてきっと、彼らより若い男性アナの名前はあまりパッと思い浮かばないのではないでしょうか。

いま男性アナは「氷河期」とも言える厳しい状況に置かれています。

かつては「女性アナウンサーは歳をとるとほかの部署に異動させられるけれど、男性はアナウンサーのまま定年を迎える人が多い」感じでしたが、いまでは男性アナも比較的若いうちに人事異動で報道記者や広報セクション、秘書などになるケースが増えていて、アナウンサーを辞めてぜんぜん違う仕事に転職してしまう人も増えています。

女子アナが脚光を浴びているその裏側で、男性アナは“絶滅の危機”に瀕しているのです。なぜなら、彼らの仕事がどんどんなくなってしまっているからです。

男性アナウンサーの「花形」はかつてはスポーツ実況アナでした。しかし、残念ながらいまやスポーツ番組の数は驚くほど減ってしまいました。巨人戦がテレビのキラーコンテンツで、ゴールデンタイムに野球が多く編成されていたのは、遠い昔の話になりました。

最近では野球もサッカーも、スポーツの試合は専門の有料チャンネルで見るのが当たり前になりましたよね。ということは、地上波に「スポーツ実況アナは多くはいらない」時代になったということです。

スポーツ、ニュース、バラエティはどれも逆風

そしてニュース番組でも、メインMCのほとんどは女性アナウンサーです。民放各局の平日夜のメインニュース番組の「顔」を思い出してみてください。

日本テレビは有働由美子アナ。TBSは小川彩佳アナ。フジテレビは三田友梨佳アナ。テレビ朝日は唯一男性ですが、大越健介キャスターはアナウンサーではなく記者出身で、金曜日はメインが徳永有美アナ。テレビ東京は大江麻理子アナと佐々木明子アナ。

ジェンダー平等の意識が高まっているからなのか、女性の視点が大切にされるからなのか、ほとんどが女性アナで占められているのが現状で、男性アナはせいぜい「サブ」なのです。