子どもの脳のペースで遊ばせることが重要

ただ、私の母が、彼女の孫(私の息子)の手をとって、「ほらほら、見てみて。こうするのよ、ほら」と指導しようとするので、「お母さん、それ、使い方間違ってる。お母さん自身が楽しそうに遊んで見せるだけでいい。彼が興味を示して、近寄ってくるのを待って。もしも彼が興味を示さないのだとしたら、彼の脳の準備が整ってないので、また明日以降、遊んでみて」とお願いした。

たとえば、ボタンがボタンホールをすり抜ける場面は、初めて出逢う赤ちゃんの脳にとっては、まるで魔法。めくるめくスペクタクルである。ただ、脳の三次元認知の能力がある程度整っていないと、これを認知して感動することはできない。

黒川伊保子『孫のトリセツ』(扶桑社新書)

願わくば、ごく自然に、赤ちゃんの脳の準備が整ったころに「抱っこしてくれた大人のカーディガンのボタンに指が引っかかって、そのシーンを目撃し、脳が興奮した」なんていう出逢いをしてくれると最高なんだけど、なかなかそんなわけにはいかないし、その後、同様のシーンを繰り返し体験することで、脳の刷り込みを強めることも、偶発的な事象では難しい。というわけで、知育玩具の登場になるわけ。

ただ、脳の準備が整っていないうちに、ボタンの出し入れをしつこく強制されたら、準備が整って出逢うべき瞬間が来たとき、赤ちゃんの脳が、その風景に飽きている可能性がある。好奇心が働かなくては、その感性情報を深く脳にしまうことがかなわない。せっかくの出逢いを無駄にしてしまうかもしれない。赤ちゃんの横で、大人がさりげなく遊ぶ……くらいの誘導が理想的だと思う。

子どもの感性を伸ばすのが目的なら、子どもの脳のペースで。子どもは、ちょっと暇なくらいがいい。脳は足りないことより、過剰なことのほうがあだになるから。

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