JR東はどのように進めるべきだったのか

みどりの窓口削減問題というと、他に選択肢のない時代を生きた70代後半以上の高齢者を思い浮かべがちだが、現在の65歳であっても2000年に41歳なのだから、携帯電話やインターネットも一定、使いこなしていたはずだ。

ところが時代の変化はどんどん早くなる。2000年代以降、さらにここ5年の急速な変化に追いつけず、みどりの窓口に頼らざるをえない層が一定程度出るのは仕方のないことだ。公共交通機関である以上、時代の変化についていけない人を切り捨てるなどという選択肢は存在しない。ではJR東日本はどのように「変革」を進めればよかったのだろうか。

オンライン予約やチケットレス化自体はサービス向上であり、利用者にもメリットがある。利用者の多くは乗車券類のデジタル化は中長期的には必然と考えているだろう。だが、コロナ禍の打撃に加え、人口減少・担い手不足に直面する事業者は一刻も早く合理化を進めたいから、自らの都合で時代の趨勢に便乗して強制的に進めようとする。これではうまくいくはずがない。

Suicaでさえ、きっぷ派からの批判は少なくなかった

みどりの窓口、券売機というリアルの接点から、オンライン・チケットレスに移行するのであれば、どちらも選択できる環境を整えつつ、後者の利便性をアピールするか、割引の設定などインセンティブを設けることで、利用者自身に移行を選択させなければならない。デジタル化に対応できない人だけが残れば、対面窓口をそうした機能に特化することができるので、業務の合理化にもつながる。

2001年にサービス開始したSuicaが急速に普及して首都圏のインフラにまでなったのは、従来のきっぷやイオカードと「券売機で購入(入金)して改札機を通過する」利用形態が同じだったことと、繰り返し使える利便性や再発行、自動精算などの機能が評価されて、自発的な移行が相次いだからだ。

IC専用自動改札機の導入はSuica登場から5年ほど後のこと。さらに5年もたつと、ほとんどの改札機がIC専用化され、券売機も大幅に削減された駅は珍しくなくなった。都市部のIC利用率はかなり早い段階で9割に達していたが、それでも磁気券で通れない改札機の増加を批判する声は少なくなかった。

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