「みどりの窓口に行く理由」を解消するのが先だ
たったこれだけのことに時間を費やし過ぎたという反省がJR東日本には、あるのかもしれないが、オンライン化・チケットレス化は鉄道利用時の行動様式が根底から変わる大改革であり、余計に慎重に進めなければうまくいくものもいかなくなる。
JR東日本が手をこまねいているわけではない。今年4月1日には通学定期券購入時の通学証明書の確認を年1回から初回購入時のみに変更、またクレジットカードで購入したきっぷを指定席券売機で払い戻しできるようにするなど、みどりの窓口に行かなければならない理由を徐々に解消している(順番が逆だろうという指摘はもっともだ)。
また導入を進めている新しいSuica改札システムでは、エリアの拡大・統合が予定されており、Suica1枚でJR東日本エリア全域を移動できるようになる日も遠くない。だが根本的な解決には、100年以上の継ぎ足しで複雑極まりない規程・基準の簡素化が必要なのだろう。
2001年のアニュアルレポートで、当時の大塚陸毅社長は「徹底的にお客様の視点に立った考え方を打ち出していかないと、当社のサービスを選択していただくことは難しい」とした上で、「私は、常日頃言っていますが、ある物事をやるかやらないか迷ったときは、お客様の利便性が向上するかしないかという視点を常に持てば、答えはわりと簡単に出てくるものです」と語っている。
これは綺麗ごとに過ぎなかったのか、20年が経過して悠長なことを言っていられなくなくなってしまったのかはわからないが、いずれにせよ鉄道は事業者、利用者、地域、社会のどれが欠けても成り立たない公共交通機関だ。利用者との信頼関係を築かずして、どんな未来像があるというのだろうか。