他者ができないなら自分たちでやればいい
そしてもう1つ重要だったのが、仕入れ先、調達先の問題です。
売価を決めたら、その条件に合う原料や工場、生産者などを地球上から探します。とはいえ、そんな取引先や業者は簡単に見つかるものではありません。
また、店舗数が増加するにつれて、仕入れの量が増えすぎてしまい、業者から調達できる量では足りないこともしばしばでした。
「ならば、自分たちで農場や工場をつくってしまおう」という発想に至るのは、当然のことでした。
そして行き着いた先が、「製造直販業」です。
製造直販業とは、お客様に直接料理を提供する店舗を持つ企業が、レストラン運営にとどまらず、自ら素材開発→食材の生産→加工→配送→調理までの一連の流れを垂直統合型で一貫して行う形態のことです。
製造直販の最大のメリットは、品質と価格を自分たちでコントロールできること。間に人や業者が入るほど、ムラが生じやすくなり、コストもかさんでいきます。
ですから私たちは自ら産地に赴き、素材の開発、素材の採り方、保管の仕方、加工の仕方、輸送の仕方に至るまで、「すべて」の工程に踏み入り、品質の向上とムダの削減に取り組んでいるのです。
主なところでは、福島県白河市のサイゼリヤ農場で種や土壌・栽培方法の開発研究を、オーストラリアの自社工場でソースやハンバーグの生産を、そして国内各地の自社工場で加工・毎日配送などをしています。
私たちはそれを「バーティカル(垂直)・マーチャンダイジング」と呼び、それを手段として外食業の真の産業化を目指しています。
理想を打ち立てて、実現すると決める
サイゼリヤではわずか十数店舗の頃から1000店舗を視野に入れ(水平展開)、60年構想で製造直販体制(垂直展開)を築いてきました。さらに人材と資産を蓄積して、それに厚みを持たせてきました。
当時の私が思う「安くておいしい」を実現するには、どちらも必要だったのです。それには、60年くらいかかりそうだということもわかっていました。
しかしそれが今や実現し、1500店舗を超えました。
もちろん、壁にぶち当たることもありますが、「人のために」実現させたいと願ったことは、不思議と叶っていくものです。
必ず「つながり」の中で調和していき、エネルギーに導かれていくように……、最終的には何とかなるものなのです。
あなたが実現したいことは何でしょうか?
まずは理想を打ち立てて、実現すると決めること。そのうえで、計画を立ててみてください。
何年かかっても大丈夫。その歩む道のりは、きっと幸せなものになるはずです。