経営面ではいいことは一つもなかった
突然の大幅値下げに、飲食業界はびっくりです。そりゃそうです、原価率は上がり、客単価は下がってしまうわけですから。
目の前の儲けのことだけを考えたら、なるべく高く買ってもらったほうがいいのは当然です。
経営という観点からは、1つもいいことはありません。でも「お客様は必ず喜んでくれる」という確信があったから決断しました。結果、売り上げ数量は約3倍に。ミラノ風ドリアは私たちの人気商品になり、お客様の数も激増したのです。
しかし、ミラノ風ドリアを290円にするのは、けっして簡単なことではありませんでした。
業者から仕入れていた食材を自社で生産する、海外に製造工場をつくるなど、従来の飲食店の枠組みを超えた改革による、製造直販体制(バーティカル・マーチャンダイジング)の構築。
日本よりも温暖な南半球のオーストラリアの牛乳を使うことで、ミラノ風ドリアのホワイトソースをより安く、おいしく提供できるようになりました。
そして、原材料がお客様のところに料理として届くまでのすべての流れから、ムリ・ムラ・ムダをコツコツと地道に排除していく改善。
290円で出せる仕組みをつくるには、この両方が必要だったのです。
一番難しいことこそ一番喜ばれる
話を戻しましょう。
ポイントは、「一番売れている人気商品」の価格を一気に引き下げたこと。一番難しいことこそ、一番喜ばれるものです。
ここで少しだけ時間をとって、考えてみてください。
あなたの仕事で、一番喜ばれることは何でしょうか? 仕事だけに限りません。あなたができることで、家族や友人が一番喜ぶことは何でしょうか?
それはもしかしたら、一番難しいことかもしれません。それでも、挑戦すれば核分裂が起きたかのような、飛躍のきっかけとなるかもしれないのです。
ぜひ挑戦してみてほしいと思います。