「辞める脳」から引き戻してくれたひとこと

――一度辞めないと新しいことはできないと思ったんですね?

【鈴木】そうなんです。周りの人に僕への固定観念があって、放送作家、脚本家、テレビの人と思われていることで意外と自由になれない。

――迷いはなかったですか?

【鈴木】僕自身は次に何をやるかよりも、先に辞めると決めていたので清々しい気持ちでした。

ただ、辞め方はちゃんとしようとは思いました。知り合いのプロデューサーさんから「おさむさんが辞めることで人生が変わる人もいますからね。だから発表するときにはそういう人への気遣いは欲しい」と言われました。

一度「辞めるぞ」と決めると、人は頭の中が「辞める脳」になってしまって、人に迷惑をかけることが意外と自分では見えなくなる。僕も「辞める」と決めたあとは、ワクワクしていたので、それを言われた時に「ああそうだ」と思って。

AD時代から一緒に仕事をしてきたディレクターさんは、僕との出会いについての長文のメッセージを送ってくれました。そうか、意外と周りの人にダメージを与えているのかもしれないと思って、一つずつ感謝していかなくちゃいけないと思うようになったんですね。

新天地で成功することは「逃げる」よりしんどい

――同世代からは「羨ましい」と言われたりしましたか?

【鈴木】「逃げる」と思っている人はいると思います。今のテレビの状況から「いい時に逃げますね」って言われますが、それは違うんですけどね。

僕が次にやることで成功すれば、今の40代、50代の人に光を灯すことになるとも思っているんです。新しい世界で仕事を始めて成功させることは、逃げることよりよっぽどしんどいことです。僕は人生2回目の天職を見つけたいと本気で思っています。

撮影=プレジデントオンライン編集部
「40代、50代に光を灯したい」と語る

次に始めることはまだ対外的には「若い人を応援する」ということまでしか言えないんですが、既にそのために動き始めています。いろんな人に相談に行くと、「いいですね」と言いながら、目は全然笑っていない。話に乗ってないのがわかるんです。

こちらからお願いをすることなんて、最近はやってきていませんでした。もちろん嫌なんですけれど、それがいいんです。嫌なことは人を成長させるので。