46歳、SMAPが解散して茫然自失に

――優しさのつもりで言っていても、結局は嫌われたくないだけだと。鈴木さんが考える「優しさ」ってどういうことでしょうか?

【鈴木】優しさのつもりで言っていても、その人のことを本当に考えているとは限らない。優しさと厳しさは隣接していて、時には離れたり突き放したりすることも必要なんです。「私が言うしかない」と思い込むのも自己満足だったりする。上の世代になるとどうしても優しさを履き違えるか、自分基準で考えがち。相手の立場になったら何をその時に言われたほうがいいのかを考えてあげることが優しさではないでしょうか。

そして表面的な優しさが罪だとわかると振り切れてくるんです。要はその人自身がどう仕事をしていくのか、40代に自分の哲学を持って生きると、50代には振り切れた人になるんです。

――鈴木さんは3月末で放送作家という仕事を辞めることも決めていらっしゃいますね。それは振り切った結果ですか?

【鈴木】僕は長年一緒に仕事をしてきたSMAPが解散して、46歳の時に一時期茫然自失な状態になってしまいました。その後は仕事へのスイッチがこれまでのようには入りづらくなってしまったんですね。

その時にバランスをとっている自分とスイッチが入らない自分の間でモヤモヤした期間が続いたんです。モヤモヤを振り払うように、Netflixでドラマを作ったり新しいことにも挑戦しました。それは良かったんですけど、もはやそれすら自分の中でのデジャブ感があったんです。

「辞める」「離れる」はネガティブな選択肢ではない

――「辞める」という選択肢しかなかったんですか?

【鈴木】僕はフリーランスだから、会社員のように退職する、「辞める」という選択肢は本来ないんですよ。会社員でも自分の中に「辞める」という選択肢が思い浮かばない人も多いと思います。頭の中に「辞める」という選択肢がない人ほど、「辞める」とか「離れる」という選択肢をネガティブなものとして捉えているのかもしれません。

僕はたまたま(山下)達郎さんのライブで「LAST STEP」という曲を聞いて、突然「そっか、辞めるという選択肢があるんだ」と気づいたんです。そこから頭の中には「辞める」という選択肢はずっとあったんですが、コロナ禍になって、番組作りも大きく変更していかなくてはならなくなって、それどころじゃなくなりました。でも、コロナが落ち着いてきて、「もう一度以前と同じことをやっていくのか」と思った時に、改めて「辞めよう」と決めました。