放送作家の鈴木おさむさんは、2024年3月で放送作家業と脚本業から引退する。その理由の一つに「自分が『ソフト老害』になっているのではないか」という悩みがあったという。「ソフト老害」とはなんなのか。ジャーナリストの浜田敬子さんがインタビューした――。
鈴木おさむさん
撮影=プレジデントオンライン編集部
1972年4月千葉県生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。バラエティーを中心に多くのヒット番組の構成を担当。映画・ドラマの脚本や舞台の作・演出、小説の執筆等さまざまなジャンルで活躍

40代は「しんどい」と覚悟していた

――鈴木さんが提唱された「ソフト老害」という考え方が大きな反響を呼んでいますね。これだけの反響があったということは、「もしかしたら?」と自分を振り返った人が多かったのだと思います。

「ソフト老害」は鈴木さんご自身が40代での経験から名付けられたものですが、鈴木さんは40代から「老害」を自覚されていたんですか。

【鈴木おさむ(以下、鈴木)】僕はずっと40代ってしんどそうだな、と思っていたんです。一緒に仕事をしてきた人たちが、40代になって立場が上がると変わってしまうのも見たし、変わらざるを得ない事情も理解できたんです。だから40代になる前にいろんな先輩に、「40代ってしんどいですか」って聞いていたら、「しんどいよ」って。「やっぱ、しんどいんだ」と、僕は覚悟して40代になりました。

「仕事が面白くなくなってきたな」

――その40代での「しんどさ」、鈴木さんにとってはどんな形で体験することになったんですか。

【鈴木】僕は19歳から放送作家の仕事をさせてもらって、30代ですでにいろんなヒット番組をやらせてもらっていました。その時にはある種の全能感もあったし、勘違いもしていたと思います。

そんな中で、自分が一緒に仕事をしてきたテレビ局の人たちが40代になり出世し、立場が変わって、会社のこと、全体のことを考えるようになると、僕も彼らに寄り添った立場で考え、発言するようになりました。

それ自体悪いことではないんですが、そうなると30代まで自分が面白いと思ったことをマグマのようにボーンと出せたのが、1回ブレーキをかけたり、全体のことを考えてマイルドにコーティングしたりするようになる。僕自身が自由じゃなくなっていて、いろんなバランスを考えるようになっていたんです。

でも最初は自分では気づいていないんですね。ただ、少し仕事が面白くなくなってきたなとは思っていました。