人生がうまくいく人はどんな考え方をしているのか。精神科医の和田秀樹さんは「経営の神様と呼ばれた松下幸之助は、『君は、自分のことを運が良いと思うかね?』と質問して、『自分は運がいい』と答えた人しか採用しなかった。自分は運が良いと思える人は、自分の実力を過大評価することがなく、謙虚な姿勢で物ごとに臨むことができるため、前向きな気持ちで、さまざまなチャレンジができるからだ。そういう人は、周囲の人にも優しくなれ、自分の生活が豊かになり、人生が楽しくなる」という――。

※本稿は、和田秀樹『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

東京大学医学部附属病院
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優しくなりたければ、自分の心の中にある「歪み」の存在を知る

現在の日本は、長引く不況や経済格差の拡大などによって、社会全体がギスギスしている状態にあります。

「自分が生活するだけで手一杯」という人が増えたことで、周囲の人たちに気を配るだけの精神的な余裕がどんどん失われているように感じます。私が最も関心を寄せているのは、不景気が長く続いたことによって、格差社会の「ひずみ」が急速に広がっていることです。

その象徴といえるのが、「生活保護バッシング」や「精神障害者差別」など、いわゆる社会的弱者に対する「理由なき攻撃」です。

大地震や集中豪雨の被害者には深く同情できる人たちが、生活保護を受けている人や、精神障害がある人には、厳しい批判の目を向けているのです。

こうした現象の背景には、無記名、無責任に自分の意見を発信できるSNSの普及が大きく関係していますが、精神科医としては、「なぜ、人はこんな行動をしてしまうのか?」という心の問題に注目しています。

優しい人であるためには、自分の心の中にある「歪み」の存在を認識して、それを修正する必要があります。

本稿では、心に余裕を持つための考え方に焦点を当てます。