勝ち負けや損得勘定は自分を見失うことにつながる
SNS上で他人を誹謗中傷している人の多くは、自分の考え方こそが「正論」であり、「世間のバカな連中は、なぜこんなことが理解できないのだろう?」という思いから、容赦のないコメントを投稿しています。
自分の意見だけが正しいと思い込み、世の中には多種多様な考え方があり、人の生き方は千差万別……ということが理解できていないのです。
最近では、SNSでコメントを投稿する際に、「この意見は誹謗中傷にあたるため、名誉毀損の可能性があります」という警告が表示される機能が普及しています。
その警告を見て、初めて自分の意見が正論ではなく、単なる誹謗中傷だと気づく人が増えているといいます。
人との比較で自分を考えたり、自分より下の人を見つけて溜飲を下げる行為は、自分のマインドをマイナスに向かわせます。
こうした発想を続けていても、自分の生活が豊かになることも、人生が楽しくなることもありません。
相手が得をして、自分が損をしたら負け……という考え方を、心理学では「勝ち負け思考」といいますが、勝ち負けや損得勘定で物ごとを判断していると、次第に自分を見失うことになります。
こうした考え方や発想は、一刻も早く改めることが大切です。
「自分は運が良かっただけ」と思えれば、自然と人に優しくできる
私は宗教を信じていませんから、神様に感謝することはありませんが、仕事がうまくいったり、何かいいことがあっても、自分の能力を過信するのではなく、「運が良かっただけ」と思うようにしています。
私が東大の医学部に合格できたのは、頭がいいとか、努力したからではなく、灘高という学校に入って、効率的な勉強法と出会えたためで、自分では運が良かっただけ……と考えています。
平穏無事な毎日が送れているのは、誰かの助けがあったり、ラッキーな巡り合わせがあったからで、自分の実力だけで手に入れたものではありません。
すべてのことに「運」が関係していますから、思い上がることなく、運が良かったことを素直に喜ぶ気持ちを大切にしています。
自分のことを「苦労して這い上がってきた」とか、「自分の才覚で勝ち進んできた」と考えている人は、何も努力をしていないように見える人に対して、冷たく接する傾向が強くなります。
それが極端になると、「自己責任論」や「自業自得論」に発展することになり、相手に対する無意味なバッシングが始まってしまうのです。
努力をしていないように見えるだけで、その人には何らかの事情があったり、もっと大事にしていることがある可能性もありますから、自分の価値観を人に押し付けることは、人間関係の悪化を招くだけ……と考える必要があります。
勝手な思い込みや決めつけは、相手を傷つけるだけでなく、自分の人生をつまらないものにしてしまいます。