「丁寧に指導する上司」が求められている

今の若者にとっての理想の上司像とは何か。引き続き別のデータから解きほぐしていこう。

次のデータ源は、日本能率協会の「2022年度新入社員意識調査」だ。このデータの最大の特徴は、やはり新入社員対象ということだろう。その中から、「あなたが理想的だと思うのはどのような上司や先輩ですか」(上位3つ選択)の集計結果を図表2に示す。

理想的だと思う上司や先輩 (出所=金間大介『静かに退職する若者たち』)

この図の興味深いところは、経年変化があることだ。ここ10年間、そのときの新入社員がどのように感じていたかが見て取れる。まず目に飛び込んでくるのは、どの時代においても「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」が1位ということ。しかもこの10年で、その割合はおよそ20ポイントも増加している。2022年に至っては、10人のうち7人がこれを理想とする状態だ。

このようなトレンドが、僕が「現在の若者こそ指示待ち傾向が顕著」と主張する一因だ。このほか、10ポイント以上の顕著な変化を示している項目に矢印をつけた。「仕事について丁寧な……」ともう1つ、急上昇しているのが「部下の意見・要望に対し、動いてくれる」だ。ご覧の通り、ほぼ倍増している。何と言うか、これを論じだすと、一悶着ひともんちゃくありそうだ(だから今、このまま筆を進めるか、ちょっと迷ってます……)。

「場合によって叱ってくれる上司」の需要は半減

「動いてくれる」って。「聞いてくれる」ならまだしも……。ちなみに「聞いてくれる上司・先輩」は、「動いてくれる上司・先輩」の2項目上にちゃんと存在している。こちらは10年間で微減の傾向にあって、もはや「動いてくれる」が逆転しそうだ。もう間もなく、上司や先輩は、聞くだけではなく、動かなければ部下の期待に応えられない時代となるかもしれない。

さて、(何とか)気を取り直して、逆に減少トレンドの項目も見てみよう。この10年で減少した筆頭格として、「場合によっては叱ってくれる」がある。10年でおよそ半減している。この点だけでも興味深いが、さらに急降下しているのが「仕事の結果に対する情熱を持っている」だ。

この項目、2012年には上から数えて3番目の支持を集めていたのだ。それが2022年には10番目。いったい何が起こっているのか。この結果、図表1の「仕事の成果にこだわる」が最下位だったことにも通ずるところがある。上司が仕事の結果に熱意を持つことが、なぜそれほどまでに現在の若者に敬遠されるのか。その解釈を助けるキーワードは「意識高い系(あっち系)」「圧」「安定」にある。