早口が間違った日本語につながる理由

接客で、知らずしらず恥をかかないために
× お求めやすい商品です

○ お求めになりやすい商品です

日本語も英語も同じですが、日常で使う言葉はどんどん簡単になっていきます。とくに現代のように早口の人が増えてくると、発音しやすくしようとして、言いにくい言葉を削ぎ落とそうとするのです。

じつは、「お求めやすい商品です」「お求めやすい価格です」というのも、この現象から生まれた表現のひとつで、文法的には誤りです。

「求める」という言葉は、ここでは「購入する」の意味で使われており、それに「お」をつけて丁寧な言葉にされています。「お求め」は名詞ですから、これを動詞にするなら「お求めになる」となります。

そして、「お求めになる」ことが、金額的に「容易たやすい」「簡単です」という意味なので、本来なら「お求めになりやすい商品です」と言わなければなりません。

ところが、「お求め―になり―やすい」の「になり」の部分は、早口で話すと、ナ行の二つの音が曖昧になり、「にな」の後の「り」が言いにくいので音が欠落してしまうのです。

さて、舌の動きを活発にすることは、アンチエイジングにもいいと言われています。間違った言い方をやめるためにも、ゆっくり話して、正しい日本語で人に言葉を伝え、さらにアンチエイジングにも活かしてもらえればと思うのです。

「お客様からのご注文を受けた品物」を尊敬する表現はNG

敬意の対象が何なのか、考えるクセをつける
× ご注文の品はお揃いになりましたか?

○ ご注文の品は揃いましたでしょうか?

「みなさん、お揃いになりましたか?」と、団体旅行の待ち合わせで、声を掛けられることがあります。「お揃いになる」は、「そろう」という動詞を丁寧語の「お」と「○○になる」で挟んで作られた言葉です。

この呼びかけは「みなさん」を強調し、尊敬して言ったもので、間違った表現ではありません。

これに対して、ファミリーレストランなどの飲食店でよく使われる「ご注文の品はお揃いになりましたか?」という言葉があります。

注文された料理が、全部配膳されたかを確認するために、従業員が客に尋ねる場面でよく耳にします。

じつはこの「ご注文の品はお揃いになりましたか」は、おかしな日本語になっています。

店側から提供することになる「お客様からのご注文を受けた品物」を強調し、尊敬して言った表現になってしまうため、誰が誰を敬って言っているのかが、よく分からなくなってしまうのです。

「お客様がご注文なさったお料理は、すべてテーブルに配膳されたでしょうか」という意味での言葉なので「ご注文の品は揃いましたでしょうか?」と言うのが正しいのです。