「第2自民党」の維新と非自民の前原氏は組めるのか
さて、前原氏の離党は、ある意味この状況に抗うものなのだろう。野党の立場を踏み越えて「準与党化」する玉木氏にいら立った前原氏は、野党第2党の日本維新の会と連携して改革保守の野党の「塊」をつくり、野党内の主導権を取り戻そうとしているのかもしれない。立憲内の保守系勢力までも糾合して野党を再編し、新たな野党第1党をつくることができれば、まさに自身が6年前に仕掛けた「希望の党騒動」のやり直しである。
メディアの一部にもそれを期待する向きがあるようだ。本当に懲りないものだ。
実は筆者には、前原氏がなぜ維新に執着するのかが分からない。
確固たる「非自民」路線を掲げる前原氏が、党のトップが「第2自民党でいい」と公言する維新と組めるのか。維新は安倍、菅義偉政権に比べれば、岸田政権とは距離を置いているようだが、大阪万博問題が行き詰まり、国費の増額が必要になれば、政権と戦うのは難しくなるだろう。現に臨時国会で、維新は政府の2023年度補正予算案に賛成している。
また「身を切る改革」をうたい、新自由主義的な性格の強い維新の政策は「All for All」(みんながみんなのために)を掲げる前原氏の目指す社会像とは真逆だ。かつて民進党代表選で前原氏と戦い、後に立憲民主党を結党した枝野氏が提唱した「お互いさまに支え合う社会」の方が、よほど親和性が高いのではないか。
最後の保守系第三極政党はどう転ぶか
「政権交代可能な二大政党づくり」を目指す前原氏の思いは、同時代を生きた政治記者の一人として理解できないこともない。だが、そこに向けての政治行動が、どうみても自身の政治信条と合わないことを、前原氏はどう認識しているのだろうか。
さて、国民民主党が尻すぼみとなった今、維新は現状では最後の「保守系第三極」政党だ。メディアの世界では相変わらず「野党第1党へ!」と持ち上げられている維新だが、筆者はむしろ、維新が過去の「保守系第三極」と同じ道をたどるか否かの方が気にかかる。
10日投開票の東京都江東区長選では、維新が推した候補が立候補者5人のうち最下位に沈み、得票も供託金没収レベルだった。
自民党と立憲民主党という、国政で政権を争う2党が推す候補者がそろっている選挙では、第三極以降の政党は、どちらかと組まない限り、単独で勝つのは難しい。そのことを改めて示した選挙だったと思う。
果たして維新も「野党第1党化」という結果を出せないまま、いずれ国民民主党のように分裂の道を歩むことになるのだろうか。前原氏の離党は案外、それを占うカギになるのかもしれない。推移を見守りたい。