地方選挙で与党系候補者の敗北が続いている。早稲田大学公共政策研究所の渡瀬裕哉さんは「岸田政権は風前の灯であるが、2009年の政権交代時とは状況が大きく異なる。人材難の野党は、無理に候補者を擁立しようとして、トラブル傾向がある人物を公認する事案が頻発している」という――。
街頭演説会に参加する立憲民主党の泉健太代表と岡田克也幹事長(2023年4月22日)
街頭演説会に参加する立憲民主党の泉健太代表と岡田克也幹事長(2023年4月22日)(写真=Noukei314/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

岸田政権は「風前の灯」だが…

岸田内閣支持率の超低空飛行を背景とし、4月の衆議院補欠選挙・5月の静岡県知事選挙のような注目選挙だけなく、地方の首長選挙で与党系候補者が惨敗する事例が出始めている。日本の選挙の地合いに大きな変化が起きつつあるようだ。9月に自民党総裁選挙が視野に入る中、岸田首相は事実上解散権を封じられており八方塞がり状態に陥っている。

したがって、2009年以来の与野党の政権交代が非現実とは言えない状況になりつつある。

しかし、2009年と比べて野党の政治家の顔が国民には見えてこない。前回の政権交代時は「影の内閣」やマニフェストが公表されており、政権交代後のビジョンについては不完全ながらも国民には示されていた。しかし、現在の主要野党は「影の内閣」やマニフェストなどを提示していないことはもちろん、選挙区候補者を十分に擁立すらできていない有様となっている。つまり、彼らには政権を担当する構想も能力すらもないのだ。

野党が第一に取り組むべきは「マトモな議員を揃えること」

安倍政権時代に板についてしまった万年野党体質は、日本の政党政治から活気を奪ってしまった。本来、国民は健全な政党政治を育成するため、政党交付金を各政党に税金から支出しているが、各政党はその利権に甘んじるばかりで、本気で政権交代を目指す意欲を失っている。野党政治家は政権運営の責任が問われる与党ではなく、万年野党の第一党でいることに満足している。まさに日本の野党政治家の政治姿勢は政党政治の堕落を象徴するものだと言えよう。

そのため、日本に健全な政党政治による競争が復活するために、一からやり直すことが必要だ。このまま解散総選挙に突入したところで、その結果は国民にとって良いものになるはずがない。

野党が第一に取り組むべきは「マトモな議員及び立候補予定者を揃えること」である。当然であるが、全衆議院小選挙区で、有権者に選択肢となる候補者を提示できない政党に与党になる資格はない。国民全員に選択の機会を与えられない政党に政権担当能力は無いからだ。仮に単独政党で全小選挙区に公認候補者を立てられないなら、複数政党で協力しても良い。それが国民から政党交付金を受領し、政権交代を目指す政党の最低限の義務だ。

しかし、上述の通り、小選挙区の野党の候補者枠は依然としてスカスカだ。