「極めて原始的な方法」で行われている人材選抜

その原因の一つは各野党の不祥事は通常の企業が採用活動で行うノウハウが欠落していることにある。

もちろん、政治の世界にはマトモな性格の人間が集まりにくい、という業界事情はあるが、現状の公認候補者選定の在り方は論外なものだ。経歴書の提出などの形式的なことはもちろん行われるが、その後は都道府県連幹部や政党本部の面談のみで審査を終わらせる政党が少なくない。キラキラの経歴書やご立派な面接の受け答えの裏に潜む、その人物のパーソナリティの問題点などは「勘や噂」に頼って判断しているのが現状だ。政党の公認候補者は未来の日本を担う人材であるはずだが、政党による人材選抜は極めて原始的な方法で行われていると言えよう。

一対一の面談
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候補者選びの一つの方法としては、アメリカのように党内予備選挙を行う方法があり得る。この仕組みは模擬的な選挙戦を通じて、候補者をある程度ふるいにかけることができる。しかし、日本の野党は各地域に十分な党員を抱えておらず、このような党員参加型の公認候補者選びを実行することは困難だ(これも政党交付金を受け取りながら、政党としての活動をサボってきた結果だ)。

賢い企業が最重視するのは「不適正な人間を採らないこと」

そこで、日本の政党は最低限の仕組みとして、日本の大手企業が採用している人材採用のシステムの導入を進めることが望ましいだろう。

企業の採用活動は同企業の生死を分ける重要な業務であり、採用活動に関するテクノロジーは急速に進化している。特に企業側は問題がある人物を特定して「不採用」とすることには極めて熱心だ。なぜなら、一度雇用した人間をクビにするのは困難であり、なおかつ社内でトラブルを起こされた場合の損失も馬鹿にならないからだ。企業経営者は優秀な人物を採りたいと願うものだが、賢い企業は優秀さよりも不適正な人間を採らないことを心掛けているのだ。

たとえば、一昔前から採用プロセスではAIが活用されており、人間が介入せず、事前に用意された質問に対して回答させ、その声、表情、しぐさなどを分析して自動的にパーソナリティ診断を行う仕組みが導入されてきている。同システムを一次面接に利用することで、人間によるバイアスを排除した客観的なデータを得ることができる。

また、そこまでのシステムを用いなくても、賢い企業は全ての就職希望者に対してシステムを用いた不適正検査を実施している。そのために必要なコストは比較的安価であり、中小企業でも導入が可能だ。不採用を判定するためのシステムは、履歴書・経歴書に記載されたご立派な肩書等以外の組織人として重要要素を持っているか、を判定するのに活用される。