SNSで大炎上する新人候補者たち

もちろん、現在の野党には、良い人材が集まらないことも事実だ。だが、政権交代を目指す政党がそのような言い訳をするなら、むしろ、それほど魅力が無い政党は解散したほうが国民のためだ。

国民民主党の東京4区公認内定予定候補者の井戸まさえ氏。元草津町議の性被害疑惑をめぐる発言で大炎上した。※2012年12月9日撮影
国民民主党の東京4区公認内定予定候補者の井戸まさえ氏。元草津町議の性被害疑惑をめぐる発言で大炎上した。※2012年12月9日撮影(写真=Ogiyoshisan/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

そこで、無理をして公認候補者を擁立しようとすると猫の手も借りたい状況となる。立候補予定者に対して十分な事前審査をすることなく、トラブル傾向がある人物を公認してしまうことも少なくない。そして、公認候補者のトラブルに巻き込まれて、党幹部が公認取り消しやトラブルの火消しを強いられるとともに、党としてのブランドイメージを傷つけてしまうこともある。

たとえば、国民民主党が東京15区で擁立していた女性の公認候補者の過去のキャリアに問題が発覚し、同候補者が泣きながら動画を投稿した挙句、結果として公認が取り消される事件があった。また、東京4区では虚偽の性的被害で告発されて、冤罪被害にあった草津町長らに事実確認を怠った記事を書いた元衆議院議員・ジャーナリストの井戸まさえ氏を公認したことで、同党がX(旧ツイッター)上で大炎上し、玉木党首が火消しに動いたこともあった。

人材難の中、少数野党が新人候補者の発掘に際してトラブルを避けることは非常に難しいと言えよう。

なぜ「トラブルメーカー」を公認してしまうのか

また、現職議員であったとしても問題行動を起こさない人物とは限らない。日本維新の会では中堅議員の足立康史衆議院議員が度重なる問題発言の累積によって、半年間の党員資格停止の処分を受けた。同議員は元官僚のピカピカの経歴であるが、過去に事務所運営で元スタッフと訴訟沙汰になっただけでなく、党内のガバナンスの手続きを軽視し、SNS上で放言を繰り返すことで知られる。

このようなパーソナリティに難がある人物を党内で一人処分するだけでも、選挙が見えてきた微妙な時期ともなると、敵対勢力やメディアからのネガティブキャンペーンを受けるきっかけとなり、有権者が政党の統治能力に疑問を抱くようになってしまう。

この事例は表面上のキャリアを重視し、組織人として難がある人材を選んで要職に就けてきてしまった失敗事例である。

野党第一党の立憲民主党も同様だ。直近の事例だと、梅谷守衆議院議員が地元の選挙区で日本酒を配ったことで公職選挙法違反として告発されている。この事態を受けて、立憲民主党は同議員に対して「軽率な行為が党の信頼を傷つけた」として党員資格1カ月間の停止の処置を取った。

公職選挙法違反の疑いで告発されている立憲民主党の梅谷守衆議院議員(2024年5月23日)
写真提供=共同通信社
公職選挙法違反の疑いで告発されている立憲民主党の梅谷守衆議院議員(2024年5月23日)

実際、古い政治体質が残っている地域においては、このようなことはあり得るかもしれない。だが、政権交代を見据えるとなると、「昔からやっているから」というようなナアナアのメンタリティで違法の疑いがある行為をする人物だらけでは、当該政党はスキャンダル塗れとなり直ぐに信頼を失墜することになる。

政党が不適切な人物に公認を与えてしまうと、政党全体のブランドイメージは大きく毀損する。それにもかかわらず、何故、政党は不祥事やトラブルを起こすタイプの人材を公認候補者として採用してしまうのだろうか。