国民民主が野党内で求心力を取り戻すのはほぼ不可能
それにしても、前原氏の離党を経て、国民民主党は今後どうなるのだろうか。もしかしたら再度の分裂があるかもしれない、と筆者は危惧している。
少し歴史を振り返ってみたい。
もともと国民民主党は、2017年の「希望の党騒動」で粉々になった民進党の「正当な後継組織」という意識を強く持っていたと思う。失速した希望の党を離れた元民進党の衆院議員と、参院で存続していた民進党議員が合流する形で、2018年に結党した国民民主党。野党第1党の立憲民主党は、もともと民進党から「離党して出て行った存在」であり、いずれは国民民主党が主導して、立憲を「迎え入れる」形で民進党の再結集を図る。当然、その時の野党のリーダーは、玉木氏であるべきだと。
しかし、過去にもたびたび指摘してきたが「小選挙区制で野党第1党の立場にない」政党が、野党内で求心力を持ち続けるのは極めて難しい。
国民民主党は最初の結党の段階で、民進党と希望の党所属だった議員の約4割が参加せず、一部が立憲民主党に合流。翌19年の参院選でも立憲に水をあけられ、20年には事実上立憲への「合流」によって、現在の泉健太代表を含む多くの議員が党を去った。現在の国民民主党は、立憲への合流を拒んで残った議員で構成される政党であり、今さら同党が単独で野党内の求心力を取り戻すのは、ほぼ不可能な状態になっていた。
次に国民民主を離党する議員の特徴
この小さな政党の中で、①「非立憲」の立場から「準与党化」に走る玉木氏、②維新との連携によって「改革保守の野党第1党づくり」を夢見る前原氏、③立憲との一本化によって「組織内候補の確実な当選」を目指す連合と組織内議員――という、3つの思惑が入り乱れた。
ここまでは「与党寄りの玉木氏vs野党寄りの前原氏」という①②の対立に焦点が当たっていたが、前原氏の離党によって、今度は①と③の対立が前面に出てきかねない。前原氏のくびきを逃れた玉木氏が「与党寄り」路線をさらに強める可能性がある一方、連合系は前原氏の離党で国民民主党の党勢がそがれたことに不安を感じているだろう。2025年の次期衆院選で比例代表の得票を大きく減らせば、組織内議員が議席を失う恐れがあるからだ。
連合はこれまで、共産党との関係の「近さ」を感じさせる立憲民主党より、国民民主党のほうに親しみを感じているフシがあった。しかし、両党の党勢の差が開くにつれ、不承不承かもしれないが、軸足をじわりと立憲に移しつつあるようにも見える。冒頭に引用した記事でも触れたが、連合の芳野友子会長は11月10日の記者会見で、立憲候補の演説に共産党関係者が応援に駆けつけることについて「現実問題として仕方ない」と述べた。
玉木氏と連合系の距離がさらに開く可能性がある。もし連合系が立憲寄りのスタンスを取り始めたら、玉木氏は耐えられるのだろうか。
すぐにさらなる党分裂の動きが起きるとは、さすがに筆者も考えてはいない。しかし、これまでの流れを見れば、国民民主党はもはや空中分解しかねない段階に足を踏み入れつつある、と思えてならない。国民民主党も結局は、過去の「保守系第三極」政党と、同じ運命を歩んでいると言えるのではないか。