資格と呼べるほどの専門性もない

気になる講座の内容ですが、専門家の一人として申し上げると、残念ながら疑念を抱かざるを得ない内容です。

例えば、「HSPタイプ診断」「自己肯定感を高めて自分を愛する」「アドラー心理学による勇気づけ」などのセッションが用意されている講座がありましたが、いわゆる通俗的な心理学トピックの内容に終始している印象です。

他の講座では「来談者中心療法」「認知行動療法」「マインドフルネス」など、一見すると専門的なセッション名もありましたが、いずれにせよ講師には「臨床心理士」や「公認心理師」など、いわゆる公的に広く専門性が認められた心理士資格がないのが気になるところです。

驚かすつもりはありませんが、心の問題は死に直結するケースもあります。本来であれば高度に専門的なトレーニングを大学と大学院で積み(臨床心理士や公認心理師の資格を得て)、ようやく臨床心理系専門職のスタートラインに立つのが一般的なルートだと思われます。

根拠のないHSP診断ビジネス

これは精神医療の信用性にもかかわる問題なのですが、一部の精神科クリニックでは、自由診療のもとで「HSP診断」を行っています。「HSP外来」なる独自の外来を設置しているのも特徴的です。「HSPであることを、第三者に認められたい」というHSP自認者のニーズを利用しているようにみえます。

「HSP診断」のなにが問題かというと、HSPは精神医学的な診断名ではないので、そもそも「診断基準がない」ということです。診断基準がないのに、どのように診断するというのでしょう。

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一部の精神科クリニックでは、定量的脳波測定(QEEG)によってHSPを診断するとうたっています。実際に、ブーム当時に検査を受け、診断書を公表するようなYouTuberもいました。検査料金は1万5000円程度とのことです。

このような治療を行っているクリニックのサイトでは、面談や診断の結果に応じて、TMS(経頭蓋磁気刺激)治療を勧める流れができています。何に対する治療なのか不明ですが、それがHSPに対する「治療」を指しているのであれば、脳波による「HSP診断」と同様になんら根拠に基づかない行為です。

こうしたクリニックでHSP自認者がTMS治療を勧められ、実際に高額な費用を支払ったという声も聞きます。料金帯は、回数や時間によってさまざまですが、30回セットを勧めるクリニックでは10万~70万円で実施しているケースもあります。もちろん、保険適用外です。

クリニックとは関係ありませんが、HSPである子ども(HSC)の「不登校克服セッション」なるセミナービジネスもあり、HSPをめぐる「生きづらさ」搾取ビジネスは、さまざまなところに現在もみられます。