「繊細ヤクザ」と呼ばれる場合も

3年前と比べれば、HSPブームは落ち着きを見せていると言えるでしょう。とはいえ、このブームの影響は、いまだにさまざまな場面で垣間見えます。書店の「心理学読み物コーナー」のラインナップはここ数年で大きく変わりました。今では「HSP」「繊細さん」といった名を冠する書籍が席巻しています。

ここで取り上げたいのはHSPをめぐる人々の軋轢あつれきです。ブームを通じて「自分はHSPである」と周囲に公言する人々が職場やネット上でも増えましたが、それをめぐり対立する人々の様子が現在もみられます。

特に最近注目されるようになったのが、一部のHSP自認者による過度に自己愛的なふるまいです。周囲にHSPであると公言している職場の同僚が仕事でミスをした際、あなたはアサーティブに(思いやりをもって)まっとうな意見を伝えるとします。すると、そのHSP自認者は「ひどく傷つけられた」と過度に被害者的な立ち位置をとり、攻撃的になったり、HSPであることを盾にミスを正当化したりするといったケースがあるようです。このような様子から、「繊細ヤクザ」といったネットスラングも生まれています。

また、一部のHSP自認者がもつ偏見や差別による軋轢にも注目が集まっているように思います。例えば「HSPは障害ではなく特別な才能」だと強く信じるHSP自認者の中には、いわゆる「非HSP」を無神経で理解できない人々だとさげすんだりするような発信もみられます。

こうした発信に対して、発達障害や精神疾患のある当事者たちからは、「障害に対する偏見が垣間見えるし、差別されているような不快な気持ちになる」という声も聞かれます。

怪しげな「HSPカウンセラー資格」が乱立

HSPブームにともなう問題には、資格ビジネスの参入が挙げられます。「HSPカウンセラー資格講座」と呼ばれているものです。

心理系の民間資格は以前から乱立状態にあるのですが、「HSPカウンセラー資格」はブームとともに参入してきた経緯があります。HSP自認者の中には、「これまでに自身がHSPで生きづらい思いをしてきたので、同じように生きづらさを抱えるHSPの気持ちが理解できる。だから、心理カウンセラーとして働きたい」というニーズをもつ人がいるのでしょう。

カウンセラーに説明する人
写真=iStock.com/takasuu
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いくつかある「HSPカウンセラー資格講座」に共通している宣伝文句は、おおむね以下のようなものです。

「HSPはカウンセラーの才能がある」
「HSPだからこそ伝えられることがある」
「HSPの生きづらさを武器に変える」

「HSPの方限定」「講師もHSP」といった宣伝文句もあります。資格講座の料金は、1講座2万円程度のものから、複数の講座をセット価格として30万円程度のものまであります。

ノーマルコース(初級)→アドバンスコース(中級)→プロコース(上級)のように、ステップアップする形でプログラムが用意されているのも、「HSPカウンセラー資格講座」では特徴的です。