現状を3割減、未来を3割増で考える
現状維持は生物の本能ですが、私たち人間には、生き延びるだけではなく、よりよく生きたいという欲求があります。そのためには現状維持バイアスを意識的に外す必要があります。
行動経済学の実験では、私たちが持っているものに対して感じる主観的な価値は、実際の価値の約2倍になることがわかっています。そのため何かを変えようとしても、現状がよほど悪くなるか、新しい選択肢が魅力的なものでない限り、なかなか踏み切れません。
物事を選択するときには、このことを加味する必要があります。つまり「現状は3割増・未来は3割減」に見えるので、現状を3割減、未来を3割増で考えるほうが、フラットな比較ができるということです。
生物は本能で危険を察知することしかできませんが、私たち人間は、将来起こり得るリスクを予測し、備えることができます。これは「計算されたリスク」(calculated risk)といい、リスクマネジメントの基本です。
もしブラック企業を退職するかどうか迷っているのであれば、退職した場合のリスクを計算します。自分が生きていくためのミニマムコストを算出し、現在の貯金や自分のもつスキル、仮に無収入になった場合、何カ月間なら食べていけるかということをすべて定量化します。もし半年、1年は暮らせるだけの貯金ができれば、一気に選択肢が増えます。よりよい人生に向けてリスクをとれるようになるのです。