「みんな生活の中で何かしら挑戦している」

自らの競技日程を終えたあとの数日間、羽生選手は何を考えていたのか。

「いろんなことを考えていました。4回転半に挑んだこと、成功させられなかったこと、頑張ってきたことや道のり、道のりの価値、結果としての価値、いろんなことを考えました。だけど、足首が痛くて練習もあまりジャンプをやったらいけないし、痛み止めもかなり強いものを飲んでいますけど、たくさん支えてもらい、もっと感謝したいと思わされた3日間でした」

羽生選手は会見の中で4回転アクセルに挑戦した軌跡について、「僕だけが特別だと思っていない」とも言った。

「みんな生活の中で何かしら挑戦している。それが生きるということだと思います。挑戦じゃないことなんて何ひとつない。それが僕にとって4回転半や五輪につながっていました。みなさんも、ちょっとでも自分を認められるきっかけになったら、僕は嬉しいです」

五輪連覇という枕詞は一生消えることはない。「3連覇は消えてしまい、その重圧からは解放されたかもしれませんが、僕はやっぱり五輪王者だし2連覇した人間。誇りを持って、これからも後ろ指をさされないように、明日の自分が、今日を見たときに胸を張っていられるように過ごしたいです」

「鎧」から解き放たれた羽生結弦

“鎧”を脱いだ羽生選手は、その後の五輪期間を満喫したように見えた。五輪最終日に予定されたエキシビションに向けた練習では笑みがこぼれ、本番も心底から楽しんでいた。大人気の大会公式マスコット、ビンドゥンドゥンと氷上でじゃれ合い、現地のボランティアスタッフとの記念撮影にも応じた。アイスダンス中国代表選手からは「お姫様抱っこ」をされて喜んだ。

2月20日のエキシビションでは、『春よ、来い』をピアノの音色で華麗に舞った。そして、3度目の五輪が幕を閉じた。

田中充『羽生結弦の肖像』(山と溪谷社)

3月1日には、世界選手権(フランス・モンペリエ)の欠場が発表された。右足首の捻挫が完治していないからだという。

羽生選手は五輪期間中、今後についてこんなふうに語っていた。

「羽生結弦のスケートを、ちゃんと僕自身、もっともっと納得できるような形にしていきたい。もっともっとみなさんが『見たい!』と思ってもらえるような演技をしていきたいってやっぱり思うので。まあ、それがアイスショーなのか、競技なのか。どっちにしろ、自分はみなさんに見ていただいたときに、『やっぱ、羽生結弦のスケート好きだな』って思ってもらえる演技を続けたいと思います」

※本稿と書籍では掲載写真が異なります。

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