都知事選の小池百合子氏VS蓮舫氏のゆくえはどうなるのか。雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんは「一騎打ちの様相を呈しているようにみえるが、蓮舫氏の公約には大いに疑問がある。非正規対策に力を入れても票はとりにくいだろう」という――。
東京都知事選立候補予定者の共同記者会見をする小池百合子氏(左)と蓮舫氏=2024年6月19日午後、東京・内幸町の日本記者クラブ
写真提供=共同通信社
東京都知事選立候補予定者の共同記者会見をする小池百合子氏(左)と蓮舫氏=2024年6月19日午後、東京・内幸町の日本記者クラブ

“蓮舫離れ”が加速しそう

都知事選は現職の小池知事と民主党を離党した蓮舫参議院議員の一騎打ちの様相を呈している。ただ、ここに来て、蓮舫氏の失速が叫ばれ出した。共産党との共闘を嫌って連合と国民民主党が距離を置いたことがその主因と目されるが、私は公約の中に大きな瑕疵かしがあることで、さらに蓮舫氏離れが進みそうだと、危惧している。

蓮舫氏は、神宮外苑再開発計画の見直し、困窮者支援、そして非正規の待遇アップなどを訴えている。その狙いは、弱者と環境にやさしい社会づくりで、無党派・リベラル層の票を獲得することだろう。

雇用ジャーナリストの立場から、この戦略は成功要素が極めて少ないと断じる。

思えば、民主党が政権をとったころ、ちまたでは派遣村騒動に代表される「非正規・格差問題」が盛んに騒がれていた。当時、非正規雇用者が2000万人に近づき、年収200万円未満のワーキングプアが1000万人というデータが示されていた。労働力調査や民間賃金の実態調査などをもとに、こうした数字が独り歩きしたことがその背景にはあったといえるだろう。

民主党は政権奪取後も、「非正規対策」を強く打ち出し、派遣村村長の湯浅誠氏を内閣特別参与に迎えて、「正社員になる」というキャンペーンを張ったのを覚えている人も多いだろう。

非正規対策に対しては、民主党同様に、社会民主党と共産党も大いに力を入れた。保守系でも平沼赳夫氏など、この問題に肩入れする議員は多かった。

非正規対策に力を入れた民主党は失速

ところが、おかしなことが起きる。

民主党はその後、党勢を失い消えてなくなり、社民党ももはや風前の灯。共産党も議席数を半減させている。「非正規対策」に取り組んだ政党・政治家はことごとく失速しているのだ。確かに、一部保守系から「悪夢の民主党政権」などと揶揄されるような政権運営に問題はあっただろう。ただ、2000万人も非正規がいるなら、彼らからの支持を得ている限り、三党そろってここまでの議席減はなかったはずだ。