結婚すると、女性の姓は男性に吸収合併されてしまう?
――前編では、家父長制の名残というお話で終わりましたが、福島さんのおうちは事実婚なんですね。
そう。大学1年のときに夫(海渡雄一弁護士・東京共同法律事務所)に出会って。結婚しようか、となったときに「はて?」と。「いままであなたのことを海渡くんって呼んできたじゃない? 結婚したら、わたしの姓は吸収合併されちゃうわけ?」って。
――吸収合併ですか(笑)。
だって、銀行が合併したら東京三菱UFJ……あっ、いまは三菱東京か、全部を入れて新しい名前にするでしょう。海外では両姓併記もあるのに、日本ではできない。彼は彼で姓を変えたくないという意向だし、じゃあ事実婚にしましょうと。
――いまの「はて?」のように、福島さんは「はて?」とよくおっしゃっていますよね。
あっ、たしかにそうかも。「はて?」って。疑問に思うことをそのままにしておくのが嫌なんですよ。立ち止まって考えたい。だから「はて?」となる。結婚なら、わたしは姓を変えたくない。あなたも変えたくない。じゃあどうしたらいいんだろう。そしたら事実婚になりましたし、別姓婚についても研究会をするようになっていったんですよ。
寅子の口ぐせ「はて?」の起源のひとつは、福島氏?
――「虎に翼」の寅子(伊藤沙莉)の口ぐせが「はて?」であるように、福島さんの著書にも「はて?」が何度も出てきます。
寅子の「はて?」っていいわよね。もしあれが「それは違うと思います!」だったら、あれだけのドラマの推進力はないと思うんです。「はて?」と考え、周りにも気づかせる。巻きこみ力があるよね。相手を否定せずに、引っかかりについて考えて掘り下げる。
――その逆が、納得いかなくても無理にのみこむ「スンッ」。序盤では、姑・妻・母・嫁といった立場のはる(石田ゆり子)や花江(森田望智)が、家庭のケア労働を一手に担うことからくる「スンッ」が描かれました。私大に通っていた頃、同級の男子学生が東大生に会うと態度を豹変させるのを見て「男の人もスンッてするんだ」と寅子が驚く場面も。
そう。スンッじゃなくて「はて?」と考えていけるほうがいいのよ。「はて?」と立ち止まって、口にする。ほら、「保育園落ちた日本死ね」(2016年)も「#検察庁法改正案に抗議します」(2020年)も、たった1人の発信から制度や法律が動くことがあるでしょ? 全部はうまくいかなくても、「はて?」と声を上げていくことで、変わることはあるから。