「風、薫る」のモチーフになった女性
3月30日にスタートする朝ドラことNHK連続テレビ小説「風、薫る」。見上愛演じる主人公・一ノ瀬りんのモチーフとなったのが、「明治のナイチンゲール」と称される大関和だ。そして上坂樹里演じるもうひとりの主人公・大家直美のモチーフとなったのが、和と同期で生涯の友でもあった鈴木雅である。ドラマは田中ひかる著の小説『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社、2023年)を原案としたオリジナル作品だが、「汚い仕事も厭わない賤業」(同書)とさえ見なされていた看護という仕事を、明治という激動の時代に女性の誇れる職業へと押し上げた二人の、波乱に富んだ人生が描かれていく。
大関和は、安政5年(1858年)4月11日、下野国黒羽藩(現・栃木県大田原市)の家老・大関弾右衛門増虎の次女として生まれた。慶応3年(1867年)の藩主急死で父は家老を辞職。田中ひかる著『明治のナイチンゲール 大関和物語』では、その際、弾右衛門は和に「今日より家禄も家も屋敷も返上し、明日からは乞食するかもしれぬが、大関弾右衛門の娘と生れし不幸と思いあきらめよ」と告げ、それでも「いかなるときも学問を怠るな」と教えたと描かれる。
大関和は元家老の娘、19歳で結婚
明治9年(1876年)、父は流行り病に見まわれ50歳で急逝した(『明治のナイチンゲール 大関和物語』)。遺した縁談に従い、和は黒羽藩次席家老の家の渡辺福之進豊綱と19歳(一説に18歳)で結婚。しかし豊綱には結婚前から複数の妾があり、義母には五反のやせ地をあてがわれて米作りを命じられた。『明治のナイチンゲール 大関和物語』は、毎日作業が終わるまで帰宅も許されず、夕食を取り損ねることや牛小屋で眠ることもあったと描く。
そんな中、和は長男・六郎をもうけたのち、二人目の妊娠を機に里帰り出産を宣言。離婚を決意する。そして明治13年(1880年)春に長女シンを出産し、渡辺家に手紙で離縁を伝えると、義父母は使用人を迎えによこしたが、和は追い返した。六郎をめぐる協議は難航したが、後に和は二人の幼子を連れて明治14年(1881年)に上京を果たす(大田原市「広報おおたわら」)。23歳だった。