恋愛ドラマを観るだけで脳内ホルモンがあふれ出す
誰しも若い頃、恋をして心臓が破裂しそうなほどドキドキした経験があるでしょう。このとき、周りの状況は何も変わっていないのに、すべてがバラ色の景色に見えませんでしたか?
これは、3つの脳内ホルモン(※)があふれるほど分泌されていたからです。
※やる気や幸福感を生み出す「ドーパミン」、愛情の源となる「オキシトシン」、心を癒す「セロトニン」
誤解のないように申し上げておくと、私は何も、既婚者の方に伴侶以外の人に本気で恋愛感情を抱くことをおすすめしているわけではありません。行きつけの美容院の美容師やカルチャースクールの講師、あるいはドラマや映画などを見て、「この人ステキ」「なんてきれいな女優さんなんだ」とあこがれる。このような感情も十分にときめきですし、脳内ホルモンは分泌されます。
Lさん(65歳・女性)は仕事を定年退職したあと、まだ現役で働いているご主人の食事を作る以外は、これといった家事をする気力もなく、ぼんやりとした日々を送っていました。ところがあるとき、友人からすすめられた韓流ドラマを観て、イケメンの主演俳優にすっかりハマってしまったのです。
その俳優のイベントがあると聞くと、友人とともに韓国まで出向くこともしばしばで、ご主人は半ばあきれながらも、Lさんがイキイキした姿を取り戻したことを喜んでいるそうです。
Lさんのように、一人で盛り上がるだけでなく、同じときめきを共有する友人がいれば鬼に金棒。脳内ホルモンの分泌は爆発的に高まります。
ただし、インターネット上で知り合った異性に本気でのめり込んでしまうことは絶対に避けましょう。国際ロマンス詐欺などに引っかかる場合があるので要注意です。年甲斐もない恋ゴコロは、認知症予防にとても有効ですが、相手を見極める目だけは、“年の功”をぜひ発揮してください。
スペシャルな趣味で知的好奇心を刺激するのがいい
先日、患者さんからおもしろい話を聞きました。その人がたまたま聞いていたラジオ番組で、高校の校長だった男性が、退職したあとにシニア向けの劇団に所属し、カラオケで流れる映像などに“俳優”として出演している、というエピソードが紹介されたというのです。
この話を聞いて私は、「それはすばらしい!」と思いました。60歳、あるいは65歳で退職したあと、俳優になろうと考えるようなチャレンジ精神に満ちた人は、おそらく認知症にはならないでしょう。
かりに認知症グレーゾーンが始まっていても、俳優として舞台に立ったり、カラオケの映像で自分の姿が流れたりするような人生を送っていれば、脳内ホルモンは爆発的に分泌され、口ぐせの「めんどうくさい」は消えるはず。知的好奇心も大いに刺激され、記憶をつかさどる海馬の萎縮を抑えるうえでも効果的です。