社交ダンスやフォークダンスで「スキンシップ」が効果的

最近、ご主人や奥様と手をつないだり、ハグし合ったりしていますか?

年をとると、家族の間でもスキンシップをとる機会がほとんどなくなります。とくに日本では、孫を抱っこするのがせいぜいで、親子や夫婦であっても、西洋人のように頻繁にハグし合ったりするケースは少ないでしょう。これは認知症対策において、とても残念なことです。

肌と肌をふれ合わせることは、愛情ホルモンのオキシトシンの分泌を高めます。このオキシトシンは、アミロイドβという毒性物質による海馬(記憶の中枢)の障害を回復させる働きのあることが、東京理科大学の研究で明らかにされています。

Nさん(72歳・女性)は、70歳を過ぎてご主人を亡くしたあと、一念発起して、社交ダンスの教室へ通い始めました。地域の公民館で開かれているシニア向けの気楽な教室のようでしたが、「男性と手を取り合って踊ることが、こんなにドキドキするなんて」と、乙女のような顔でいつもお話しされます。

社交ダンスを始めてから友人も増え、おしゃれをすることが楽しくなり、最近はネイルアートにも挑戦しているとのこと。最初は戸惑っていた息子さんたちも、そんな彼女の様子を見て、だんだん応援してくれるようになったといいます。

これはとてもステキな生き方で、年齢に縛られない「年甲斐もない生き方」の好例です。Nさんは70歳のときに認知症グレーゾーンと診断されましたが、2年経った現在、認知機能はほぼ正常に回復し、誰よりもイキイキとした人生を送っています。

ドキドキ、ときめきが認知機能を復活させる

一つのきっかけで、こんなにも人は変わるのだと、私はNさんから教わりました。

朝田隆『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』(アスコム)
朝田隆『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』(アスコム)

「社交ダンスはちょっとハードルが高い」と思う人は、フォークダンスのサークルに参加するのもいいでしょう。フォークダンスは、決まったパターンの繰り返しのため覚えやすく、次から次へと相手が変わっていくので、「ときめき度合い」が倍増するかもしれません。

もちろん、長年連れ添った伴侶とのスキンシップでもオキシトシンの分泌は高まります。

「何をいまさら……」なんて思わずに、試しに一度、久しぶりに手でもつないでみてください。忘れていた「ときめき」がよみがえるかもしれませんよ。

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