※本稿は、富永喜代『女医が導く 60歳からのセックス』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
なぜ「イタい中高年」になってしまうのか?
人生最高のセックスは、経験を重ねて深みを増した男女が、互いに思いやり、慈しみ合うことで訪れます。若い頃の性欲や勢いに任せたセックスと同じやり方では、到底たどりつけません。
ちなみに、性欲や勢い任せのセックスを中高年でも実践しようとすると、体力やコミュニケーションに無理が出てきて、多くの場合、「イタい中高年」になってしまいます。何事も年齢相応のやり方があり、それが自然の摂理でもあります。
ですから、熟年は年齢にふさわしい「熟年の愛の作法」を学ばなければなりません。50~60代は最高のセックスにもってこいの時期ですが、セックスが異性との深い人間関係の上に成り立つものである以上、失敗してしまうリスクも大きいのです。
ここから少し、社会性が欠けてしまった中高年の象徴的な事例をお話しします。社会性が欠ければ、セックスする相手など望むべくもありません。まずは、私の知り合いの女性医師の話です。
「ベビーカーなんて邪魔だな」に返した一言
まだ幼い我が子をベビーカーに乗せて、都心のデパートへ買い物に出かけた彼女は、1階から上層階まで移動するためにエレベーターを利用しました。休日の昼下がりということもあり、エレベーター内はほぼ満員状態だったそうです。彼女もぐっすり寝ている我が子を起こさないように、周囲に配慮しながら、やっとの思いでベビーカーを押し、エレベーターに乗り込みました。
やがて途中の階で、ひとりの中年男性が乗り込んできました。その男性は、彼女とベビーカーを一瞥すると、すぐさま舌打ちし、「まったくベビーカーなんて邪魔だな。場所を取りやがって」と吐き捨てるように言い放ったといいます。
彼女は一瞬、頭が真っ白になったそうですが、そこはあらゆる医療現場をくぐり抜けてきた百戦錬磨の女性医師。その男性に向かって「これは“ベビー”カーなんです。小さい赤ちゃんが乗ってるんですよ、狭いならあなたが降りなさいよ!」とまなじりを決して反撃したのです。すると男性はたじろぎ、すぐさまエレベーターを降りていったとのこと。