脚を組んでいる女性の脚を新聞紙で叩き始め…

昨今、「キレる中高年」「暴走する中高年」という言葉をメディアでも盛んに目にします。この話もその典型例といえるでしょう。しっかり者の知人は、理不尽な発言をされてもすぐさま言い返しましたが、少し気が弱い女性だったらどうでしょう。黙って下を向いてしまったり、自分からエレベーターを降りてしまうことも容易に想像できます。

小さな赤ちゃんは周囲から庇護ひごされるべき存在ですし、男性も年長者らしく、幼子を連れた母親を気遣うそぶりを見せるのが、年長者として求められる振る舞いです。

しかし、自分の意に沿わない事態(この場合は、乗ろうとしたエレベーターがほぼ満員だったこと)が起こると、男性は自分よりも年下で、ましてや子どもを連れた母親を罵倒ばとうするという正反対の行動に出ました。

また、女性医師の話とは別に、こんな動画が私のSNSに流れてきました。その動画の中では、電車内で脚を組んでいる若い女性の脚を、突然、年配の男性が手に持っていた新聞紙で叩き始めていました。たしかに狭い電車内で脚を組むのは迷惑ですが、見知らぬ相手を突然叩くという行為は、ちょっと考えられません。

「おやじギャグ」は脳の認知機能が衰えている証拠

なぜ、その男性は口頭で注意するでもなく、いきなり叩くという暴挙に出てしまったのでしょう。このように感情的な言動に歯止めがかからないのは、加齢によって脳のブレーキ役となる前頭葉の働きが弱くなっている、つまり、脳の認知機能が衰えていることが一因と考えられます。

身近なところでは、いわゆる「おやじギャグ」も象徴的な例です。

おやじギャグは、中高年男性が口にする、時代や場の空気を読まない冗談やダジャレです。ときに、笑えないセクハラまがいのものも見受けられます。たとえば、髪や服装のイメージチェンジをした女性に「○○ちゃん、彼氏でもできた?」と言ったり、女性の腰つきを見て「丈夫な子どもが産めそうだね」と口にしたり、カラオケの歌声を聴いて「夜もいい声を出しそうだね」などと冗談のつもりで言う人も、驚くべきことに存在しています。

こうした冗談は若い頃はあまり耳にしませんが、中高年になるとおやじギャグを無意識に口にするようになってしまう。これも前頭葉の機能低下が原因のひとつと考えられます。