一方、12年1月に世界で初めてPHVを発売したトヨタ。副社長の布野は言う。
「EVは、どうしても電池の性能に依存します。急速充電器のような社会インフラの敷設も必要になる。この点、PHVは現状の社会インフラのまま使えるのです。中国は広い国。電池が切れても、そのままHVとして走行できるメリットは大きい。そもそもEVに充電する電気は、すべてが再生可能エネルギーではなく、火力発電に依存しています。“Well to Wheel(油井から車輪)”という切り口で総合的に見ると、PHVは有効。中国政府がEV一辺倒ではなく、PHVを選択したのにはそんな意味があります」
さて、中国政府とトヨタの間には、「ある“しこり”がある」(大手メーカー幹部)という。80年代に、中国政府は産業育成のため、外資導入を決断。自動車では、トヨタに進出を要請した。ところが、トヨタはこれを断ったのだ。モータリゼーションがいつ起こるのか予測がつかない中国よりも、米国進出を優先させたのが経緯だ。ちなみに、トヨタに代わり、中国に進出したのがVWで、いまでもVWは中国でトップにいる。
この点を布野は言う。「あくまでも当時の戦略に基づいた決定。早くいくか遅くいくかは問題ではないと思います。いまでもケシカランと言う人、関係ないと言う人、多様にいますが、与えられた状況のなかでトヨタは中国事業に取り組んでいく。お陰で、いまは好調なんです」。
今回の新エネ車500万台の政策をめぐり、日産とトヨタは激突していく。