自身の安全保障を暴力に頼るしかなくなる

4つの罪で起訴されていた日産元会長のカルロス・ゴーン被告(65)が、初公判を前にレバノンへと不法出国したのは、2019年12月30日のことだ。

レバノン・ベイルートで記者会見を開くゴーン被告。(時事通信フォト=写真)

私が問題としたのは、会社法違反(特別背任)だ。犯行を一言にすれば商取引に見せかけて、資金を迂回させて自己に還流していたということになる。現金を移動させていれば誰でも理解できるのだが、資金移動に「SBL/C」という、日本人には理解できない証券を使い悪質性まで覆い隠した。

すでに19年7月に発売された『金融ダークサイド』(講談社)で解説しているので、詳細はそちらに任せたい。

注目すべきはゴーン被告のその後だろう。20年1月9日にはレバノン政府が当面の渡航禁止を決定したが、豪腕経営者の復活はあるのか――。

不法出国後、日本側の要請によって、ICPO(国際刑事警察機構)からゴーン被告に対する赤手配書(国際逮捕手配書)がレバノンに送られた。「赤色手配書」が出されると、まともな国への入国は格段に難しくなる。根拠は、私自身が「赤手配」をされたからだ。

日本の司法制度を痛烈に批判するゴーン被告を「反日」のアイコンとして、中国や韓国の自動車メーカーが雇用するという観測報道もあった。だが自動車メーカーのある国など論外で、賄賂の効く貧困国に入国できるのが関の山というのが現実だ。