ハラスメントはバロメーターになる

同調圧力がネガティブな方向に働いているかどうかを見る、一つのバロメーターになるのが、「社内でセクハラやパワハラなどのハラスメントが横行していないかどうか」です。ハラスメントが蔓延している会社の多くは、こうした同調圧力が大きく働いて、悪い文化を強化してしまっています。被害者が声を上げにくくなるだけでなく、周囲も「口出しをしてはいけない」という圧力を感じて、黙り込んでしまう。さらに、こうした空気がつくられると、加害者に対しても、「自分がやっていることは、許されている」と、“お墨付き”を与えてしまいます。

報道によると、ビッグモーターについては社内で広く、複数の営業所などで、保険金の不正請求や街路樹への除草剤散布が行われていたようです。これも、同調圧力が悪い方向に強く働いてしまったのではないかと考えられます。保険金の不正請求や、街路樹への除草剤散布をやることが、「当たり前である」「やらなくてはいけない」と思わせる圧力と、こうした行動を止めにくい、「口出しをしてはいけない」と感じさせる圧力の、両方が働いていたのでしょう。

同調圧力は会社にとって好都合

同調圧力があることは、会社にとっては非常に好都合です。なぜなら同調圧力は、会社の和を乱す人を圧倒的に減らすことができるからです。同調圧力があると社内の秩序は保たれやすくなり、会社も管理しやすくなります。

しかも同調圧力は、いわば“暗黙の了解”なので、就業規則に書かれているわけでもなく、議論の末に明文化されたわけでもありません。誰も責任を持たなくていいように見えてしまう。よく、会社で不祥事があったときに、記者会見等で社長など経営陣が「私は知らなかった」「そんな指示はしていない」「社員が勝手にやったこと」と責任逃れをすることがありますが、このためです。

例えばビッグモーターが、店舗前の街路樹に除草剤を散布して枯らしていた問題もそうです。おそらく「除草剤をまきましょう」と会社の文書に書いてあったわけではないでしょう。書いてあっても、せいぜい「環境整備をしましょう」だと思います。

しかしながら、こうした同調圧力がネガティブな方向に働くと、「内部告発は絶対に許さない」という空気が蔓延し、隠蔽いんぺい体質に発展してしまいます。同調圧力が「おかしい」と思った従業員を黙らせるようになるのです。

写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi
※写真はイメージです