どこにでもある「同調圧力」
ブラック企業といわれる会社に共通するのは、長時間労働やパワハラ、その他の違法行為や“グレー”な行為について、従業員が「おかしい」と思っても上に物申せない、言い出しにくい雰囲気があるという点です。“同調圧力”が強く働き、ネガティブな会社風土を強化してしまっているといえます。
大多数の考えや行動に合わせるように誘導する雰囲気や“空気”が同調圧力です。
同調圧力というのは、学校や地域、社会全体など、どこにでも存在しますし、必ずしも悪いものではありません。ゴミをポイ捨てしない、電車やバスを並んで待ち、順番を守るなど、「マナー」と呼ばれるものの多くは、もちろん、「そうした方が気持ち良くいられるから」という理由で守っている人もいますが、「周りの人がそうしているから」といった同調圧力が働いて守られているところもあるでしょう。つまり、同調圧力があることで、集団の秩序を保ちやすいという面もあるのです。
行動を仕向ける圧力、口出ししにくくする圧力
会社は、大人数で一つのコミュニティーをつくっているので、同調圧力が生まれやすい場所でもあります。そしてそれは、2つの方向に働きやすくなります。
一つ目は、従業員に特定の考えを持ったり行動することを仕向ける圧力。二つ目は、周りに対してそれを止めたりしにくい、「口出しをしてはいけない」という雰囲気をつくる圧力です。
例えばひと昔前は、新人歓迎会の宴会で、新人全員に一発芸をさせたりすることがありました。
Aさん、Bさんがやって、次に自分に順番が回ってきたら、やりたくなくてもやらざるを得ない雰囲気ができています。それが一つ目の圧力です。
だからといって新人ではない3、4年目くらいの社員が、「自分も昔、新人だった時は嫌だったし、今の新人も嫌がっているようだから」と思っても、「もう、こういうのはやめましょうよ」とは言いにくい雰囲気になっています。これが二つ目の圧力です。「余計な口を出すな」という同調圧力が、周りの人にもかかっています。
こうした2方向の同調圧力は、どんな会社にも多かれ少なかれ存在します。ですから、どんな会社でも、ブラック企業になる可能性を持っていると考えたほうがいい。誰もがそのことを認識し、自分の会社に存在する同調圧力について意識すべきでしょう。