「現状」「目標」「課題」の順番に伝えて相手を納得させる

「ギャップ法」という話し方もあります。まず現状を話し、ありたい姿(目標)を提示して、現状と目標とのギャップ(課題)を共有し、解決策を提示するという話し方です。

「今こうだよね」(現状)

と現状の事例を出すと

嶋津良智『話し方の一流、二流、三流』(明日香出版)

「うんうん、私もそう思う」
「あるある、私も経験したことがある」

と、自分のこととして聞き手は感じます。

そこで、

「もしこうなったらいいと思わない?」(目標)

と話すと、聞き手は「確かにそうだ」と思います。

そして、

「そのためにはこんな課題があるよね」(課題)
「解決するためにはこうしたほうがいいよね」(解決策)

と話すと、納得できますよね。

そう、これはテレビやラジオの通販番組でもおなじみの手法です。

この手法では、感情変化のプロセスが上手に設計されています。つまり、事例を、こんな悩み(=課題)として考えさせて、理想の状態を提示し、解決方法として商品を紹介しています。聞き手の感情の動きを心の中の声として表現してみると、こんな感じです。

ビフォー 「あまり期待できないな……」
 「おっ、なんだかこれまでと違うぞ」
 「へー、そうなんだ!」
 「ほう、そういうことか」
 「いいね~」
アフター 「うん、これならいけそうだ!」

だから、テレビショッピング、ラジオショッピングの語りを聞いているうちに、つい、その商品が欲しくなってしまうんですね。あなたから「買う」という行動が引き出されているんです。

ジョブズのスピーチに学び「what」ではなく「why」の効用

「ゴールデンサークル」という理論もあります。

二流の話し方では、What、How、Whyの順で、話の外側から話しますが、一流の話し方では、Why、How、Whatの順で、話の核心から話すというものです。

もし、スティーブ・ジョブズが普通の人だったら、

「我々のコンピュータは素晴らしく(what)、美しいデザインで誰にでも使える(How)、なぜなら、違う考え方に価値があると信じていて、世界を変えるという信念で行っているからだ(Why)」

と話したはずです。

写真=iStock.com/kasto80
※写真はイメージです

でも彼は、話し方も一流の人でした。だから、なぜするの? どうやってするの? 何をするの? の順で話したんです。

「我々のすることは全て世界を変えるという信念で行なっています」(why)
「違う考え方に価値があると信じています」(why)
「私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ、簡単に使えて親しみやすい製品です」(how)
「こうして素晴らしいコンピュータができあがりました」(what)

一流は、目的に応じて話す方法を変える
一番伝えたいことに合わせて、話し方を変える
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