自分ごと化するために、感情を擬似体験させる
理論だけを語ってもそれだけだと、頭で理解するだけでひとごとだったり、遠いことのようにとらえてしまい、自分の感情にはなかなか引き寄せられないのが人というもの。
例えば、「トイレはきれいに使いましょう」というのは、理論なんです。それよりも、
「あなたがトイレに行って、汚れていたらどう思う? 自分だったら嫌ですよね」
と言うほうが、ずっと自分のこととして近づいてきますよね。
じつは私自身、小さい時から母に
「自分がされていやなことはしないで、されてうれしいことをするのはどうかな?」
と言われて育ちました。
たとえを使うのは、感情を擬似体験させることで、自分ごとにすることなんです。
「例えば、~~~~」
「もし、~~~~」
という言葉を使って、比喩を通じて相手の感情に働きかけ、自分のこととして考えてもらうような話し方を、ぜひ、取り入れてみてください。
身近なたとえ話を通じて自分ごととして考えさせる
言葉が現実をつくるから、相手目線で伝える
三流は、やってほしいことを伝え、
二流は、自分都合で頼み、
一流は、どんな目線で話す?
相手に何かをやってほしいときには、どういうふうに伝えたら相手が受け取りやすいかを考えると、相手から必要な行動を引き出しやすくなります。
タクシーに乗ったときのことを思い出してください。「シートベルトをお締めください」というメッセージは、どんな言葉で語られていると思いますか?
正解があるわけではないのですが、次のようなメッセージが考えられます。
「後部座席にお座りのお客様もシートベルトをお締めください」
「万一の事故の際、当社は責任を負いかねますので、後部座席にお座りのお客様もシートベルトをお締めください」
「お客様の安全を守るために後部座席にお座りのお客様もシートベルトをお締めください」
ずいぶん、印象が違いますよね。
三流のコミュニケーションでは、やってほしいことだけを伝えます。二流なら、お客様が納得できるように理由を付け加えますが、自分都合の視点からの理由です。一流のコミュニケーションならば、その理由は相手目線に立ったうえで、してほしいことを伝えます。
なぜ相手目線で伝えるのか。それは、言葉が現実を作るからです。
自分都合だと、「自分がそうなっては困る理由」=「責任を負えない」などのネガティブワードで理由を語りがちですが、相手目線ならば「相手がそうなったらいいなと思う理由」=「お客様の安全を守る」などのポジティブワードで理由を語りやすくなるからです。