一流の野球監督は「低めは打つな」と伝えない

人というのは、ほしい成果に対して必要な言葉を使う必要があります。

例えば、頭の中ではラーメンを食べたいと思っていても、「カツ丼をください」と言ったら、カツ丼が運ばれてきます。だから、ラーメンが食べたいならば、「ラーメンをください」と言わなければなりません。言葉で言ったことが実現するという、一番シンプルな例です。

逆にいえば、求める成果に対して、不必要な言葉をいかに使わないかが重要になるのです。なぜなら、本書の別の章でお伝えしている「言語的相対論」の通り、人は自分の発した言葉とイメージに支配されている生き物だからです。

つまり、野球で

「低めを打つな」(してほしくないことを伝えている)

と言うダメ監督か、

「高めを打っていけ」(してほしいことを伝えている)

と言うデキル監督かの違いです。

サイドラインから選手を指導するコーチ。
写真=iStock.com/BeauSnyder
※写真はイメージです

つまり、悪いイメージは思い浮かべるだけ、無駄なんです。ましてや、口に出して言う、言葉で聞いてしまうなんていうのは、不必要この上ないんです。それよりも、成し遂げたいことを話して、成功する確率を上げていくほうがよくないですか?

一流は、相手都合で話をする
相手目線で考えて話し、相手のメリットで動いてもらう

「お電話をいただけますか?」で無断キャンセルが激減

・有言実行
三流は、説得し、
二流は、納得させ、
一流は、相手に何と言わせる?

あるデータによると、人から言われて仕方なくやった仕事の生産性を1とすると、人に言われたことだけど、納得してやった仕事は1.6倍の生産性があり、自分で考えて決めた仕事の生産性は、1.6の二乗、つまり2.56倍にもなるそうです。

その理由は、人は何事も合理化する傾向があり、つまり自分の意思と行動の間に一貫性をもたせようとするからなのだそうです。

この一貫性の原理を利用して、無断キャンセルを減らすために、キャンセルについての伝え方を変えてみるとどうなるでしょう?

「キャンセルされるときはお電話をください」

が元の伝え方だとしたら、

「キャンセル待ちのお客様がいらっしゃるので、キャンセルのお電話を必ずください」

は、納得してもらう伝え方。

「キャンセルされるときはお電話をいただけますか?」

は、相手がつい「はい」と答えてしまう伝え方です。

じつは、アメリカの研究者が、実際に実験しています。

「キャンセルされるときはお電話をください」

から、

「キャンセルされるときはお電話をいただけますか?」

に変えてみたところ、言い方を変えただけで、無断キャンセルが激減したというのです。

つまりは、「はい」と答えると、「請け負った」という無意識の約束が生まれ、約束をしたから守らなければいけないという一貫性の原理に基づく意識が生じます。それで、キャンセルをするときには電話をするという行動を引き出せたのです。