クレームが減るという嬉しい効果も

マネジャーは、経験の浅い部下への指導が激減し、余分な支援業務から解放されました。

本来の業務に集中する時間と気持ちの余裕が生まれ、より生産的な仕事や、部下の意欲を後押しする支援にも目が行くようになりました。

一般社員も、職場でのルール・行動指針や、社会人基礎力を土台とした技術スキルの個別確認・学習で不安が減り、落ち着いた気持ちで業務にのぞめるようになりました。

社員全体のスキルが底上げされた結果、お客様からのクレームが寄せられなくなるという、嬉しい効果もついてきました。

システム導入によるセルフマネジメントの実践により、上司は部下の行動や進捗しんちょくを確認する手間が省け、部下は「やらされている感」を感じずに、自分主体で仕事と向き合うようになったのです。

社員の誰もが、無駄に悩まず、迷わず、心に不安やガラクタを抱え込まずに、仕事にやりがいを感じて成長し続けられる。

そんなプラスの連鎖が、社内で生まれたのです。

離職率4.5%、組織偏差値「70超」を達成

スキルマネジメント導入の成果は、エンゲージメント・スコアにも反映していました。

人事評価制度の再設計とスキルマネジメントの運用後に行ったエンゲージメント・サーベイでは、プレイングマネジャーのスコアは、2018年の27.6から2019年には54.3までに回復。2022年の時点では75.6と、驚異的な数値をたたき出します。

組織偏差値を表す社員全体のスコアでも2019年の67.9から、2022年には同規模企業内の上位2%しか到達しない、70%を超える躍進をみせました。

中塚敏明『従業員エンゲージメントを仕組み化するスキルマネジメント』(クロスメディア・パブリッシング)

行動面の診断では、弱みとなる項目が全て消えました。強みの項目には、新たに会社の目標となる理念戦略や、研修制度の充実などの制度待遇が現れました。

この結果は、会社の方向性と社員の想いの一致と、社員の環境に対する満足感の高まりと成長意欲を物語っています。

さらに、従業員満足度の大幅な上昇は、会社の実績にも直結しました。

離職率は41.5%から4.5%へと大幅に減少。これにより各種KPI(中間目標)、売上の収支も、改善したのです。

スキルマネジメントによって社員の意識改革が進んだだけではなく、会社そのものが、成長意欲の高い組織へと変貌を遂げたのでした。

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