マネジャーが部下への寄り添い疲れで疲弊

2018年のプレイングマネジャーに絞ったエンゲージメント・スコアでは、2016年のサーベイ開始時には50だったスコアが、一気に27.6へ急降下しました。そこから浮かび上がったのは、部下への寄り添いで疲弊しきった、現場マネジャーの姿です。

一般社員への支援をするかたわら、自らもプレイングマネジャーとして働く現場マネジャーの業務は、エンゲージメント・サーベイの導入前よりも倍増していました。

長時間労働と休みの減少、それに加え、心理的圧迫感が重なり、モチベーションの低下したマネジャー層の会社離れが加速していたのです。

当社は、それまで成功していた、エンゲージメントの診断にもとづく組織改善方法では越えられない、第2の壁にぶち当たっていました。

社員間の業務・責任の線引きを明確化

管理職を寄り添い疲れから解放し、一般社員を自力で仕事を回せるレベルへ導くには、組織に所属する人を変えるのではなく、仕組みを変えなければならない。

悩んだ末に、社員の役職ごとに求める成果目標の再設計に着手します。改めて各役職の役割と昇格条件を、より明確に定めて全社員へ情報公開を行いました。

CEOと組織図
写真=iStock.com/NicoElNino
※写真はイメージです

これにより、個々の社員に目的意識が生まれ、キャリア形成への関心も高まりました。上の役職を目指す若手社員も増え、各自の仕事へのやる気に弾みがついたのです。

社員全体の仕事に対するモチベーションの上昇に勇気づけられ、私は管理職と一般社員、それぞれの不安や悩みの解消に乗り出します。

マネジャーを、部下への寄り添い疲れから解放し、社員が自力で仕事を回せるようにするには、やはり各自が自分で実行できる、仕事の仕組みを構築すべきではないか。

そこで閃いたのが、上司が行うマイクロマネジメントを部下本人のセルフマネジメントに任せる、スキルマネジメントです。

スキルマネジメントとは、当社が提唱する、組織の最大化を実現するマネジメント手法です。その特徴には、個々の社員が自己完結でスキルを管理して、仕組みでPDCAを推進する「人」と「システム」による分業スタイルです。

私は、セルフマネジメントによる、能力開発を推進するシステムを設計して自社へ導入しました。主に若手社員や新入社員を対象とした「社会人基礎力」の強化に取り組んだところ、社員間での業務・責任の線引きがより明確になり、各社員の行動および心境には変化がみられました。