誰もが昇給・昇格を理解できる仕組みを整備

とにかく社員の不信感を解消しなければと考え、まずは、人事評価制度を抜本的に見直したのです。会社の方向性を示す、経営計画とミッション・ビジョン・バリュー、これらを体現する行動指針を定め、人事評価制度に組み込みました。

給与についても、会社の経営状況に見合った賃金テーブルを再設計し、社員へ公開しました。人事評価制度と賃金テーブルを連動させて、昇給・昇格を誰もが理解できる仕組みを整えたのです。

人事評価制度を整える一方で、社員間のコミュニケーションを深める施策も打ちました。IT派遣・SES事業の特性上、企業に常駐する社員と上司との関係性は希薄になりやすいため、人事評価面談などを増やし、お互いが信頼関係を構築できるように後押ししたのです。

半年ごとに測定する、エンゲージメント診断のフィードバックを確認しながら、経営目標、人事評価制度、社員間でのコミュニケーション改善を進めていきました。

待遇を改善できなくても「67.9」に上昇

2016年から始めた社内改革が実を結び、当初47.8だった社員全体のエンゲージメント・スコアは、2018年には中央値の50を超えました。さらに、2019年12月には、67.9に上昇しました。

この間従業員から寄せられた、給与や住宅手当などへの要望は叶えられませんでしたが、それでも、スコアは跳ね上がったのです。

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たとえ待遇を改善できなくても、会社の方向性と評価制度への納得感を醸成できれば、社員はついてきてくれる。

この点に気づけたことは、私にとって非常に意味がありました。

会社の強み診断でも、従業員への支援行動が、長所にランクインするようになりました。上司がフラットに部下の話を傾聴して、困った時には助ける姿勢が、高スコアにつながったと思われます。

一般社員からの不満の声は消え、社員全体では離職率も25%に低下しました。エンゲージメント・スコアの上昇と比例して、組織の安定も徐々に感じられるようになっていました。

しかし、社内の雰囲気は良くなったものの、会社の業績は経営目標には及びません。2017年から2018年にかけて、社員の平均単価、売上の伸び悩む時期が続くようになりました。

ちょうどその頃、社員全体での離職率低下と逆行するように、ミドル層の役職にあたる、マネジャーの離職が目立ち始めました。