注文はすべてモバイルオーダー
いったい、ラッキンのどこがすごいのか。
一言で言えば、スターバックスのサードプレイス戦略(快適空間)の真逆をいった。
具体的に、ラッキンの戦略を見ていこう。大きく5つにまとめることができる。
ひとつは、モバイルオーダーを前面に打ち出したことだ。
ラッキンでは、スマートフォンから事前注文をし、それから店舗に取りにいくという購入スタイルが基本だ。いまや中国の多くの店舗が導入しており、日本でもモバイルオーダーはファストフードを中心に利用できる。だが、ラッキンが創業した2017年当時は、中国でもまだ新鮮な購入体験だった。
注文時にスマホ決済で会計も済んでいるので、長い行列に並ぶことも、ドリンクができるのを待つこともなく、店舗ではスマホの画面を見せるだけでコーヒーを受け取れる。
中国では、オフィスでコーヒーを飲むという人が圧倒的に多い。出勤時や休み時間に店舗に行き、テイクアウト注文をする。そうした忙しいビジネス客にウケた。
新規客でもすぐにアプリが利用できるワケ
中国にはこのモバイルオーダーを支える環境が整っていた。
モバイルオーダーでの注文はアプリで行うのが一般的だ。ただ、専用アプリにすると、インストール、アカウント作成、決済手段登録という複数のハードルがあり、新規顧客の獲得は簡単ではない。
しかし、中国にはほぼ全国民が使っているSNS「WeChat」にミニプログラムという機能がある。これはLINEのミニアプリによく似た仕組みで、WeChat内で起動できる小さなアプリのようなものだ。
事前にインストールしておく必要がなく、ログインにはWeChatのアカウントが流用され、決済はWeChatペイが自動的に使われる。なので、初めて起動した時にもいろいろな設定は一切不要で、いきなり注文ができる。これにより、新規顧客を高速で獲得していった。